あなたの知らない英国車「ブリストル406」とは? BMW製6気筒と兄弟といわれる直6エンジンで気持ちよく走るコツをお教えします【旧車ソムリエ】
1961年式 ブリストル406
「クラシックカーって実際に運転してみると、どうなの……?」という疑問にお答えするべくスタートした、クラシック/ヤングタイマーのクルマを対象とするテストドライブ企画「旧車ソムリエ」。今回は、日本にはわずか2台しか生息が確認されていない、英国の希少なミドル級高級ツーリングカーの「ブリストル406」を俎上にのせ、そのモデル概要とドライブインプレッションをお届けします。 【画像】小ぶりなベントレー? 航空機メーカー由来の高級車「ブリストル406」を見る(28枚)
わが国では未知の存在、ブリストルとは?
「ブリストル406」というクルマの解説に入る前に、まずはイギリス以外ではほとんど見ることのない、ブリストルというメーカーについても軽くご説明させていただきたい。 第二次世界大戦が終結した1945年。それまで航空機メーカーとして「ブレニム」や「ボーファイター」など数々の名機を輩出してきた「ブリストル・エアプレーン・カンパニー」の社主、ジョージ・スタンレー・ホワイト卿は、戦後の航空機生産縮小で余剰となってしまった優秀なスタッフたちに職務を用意するために、高級乗用車の生産に乗り出すことを決意。その本拠でもあるブリストル市近郊の田舎町フィルトンに、新たに「ブリストル・カーズ」社として分社を果たした。 創成期のブリストル各モデルは、航空機基準で生み出された高度に緻密なつくりに、英国製高級車の伝統を体現したインテリアを両立するなど独特の魅力を湛える反面、土着性がきわめて高く、イギリスおよびコモンウェルス以外の国では車名さえあまり知られていないのが実情。それでも「コニサー(通人)」のためだけにクルマを創るという稀有な姿勢から、自動車メーカーとしては休眠状態にある現在でもなお、クラシックカーの世界では独自のポジションを築いている。 いっぽう今回の主役である「406」は、スイスのコーチビルダー「カロッセリー・ボイトラー(Carrosserie Beutler)」が製作した試作車の状態で、1957年にパリおよびロンドンのモーターショウにてお披露目されたモデル。1950年代の「404」および「405」以来となるジェット吸入口のようなノーズに、ボイトラー試作車から発展した、より重厚なプロポーションを組み合わせた2ドアサルーンである。 メカニズムの面において、従来のブリストル各モデルに対する最も重要な変更点は、直列6気筒OHVエンジンのボアを66mmから69 mmに拡大したこと。ストロークは100 mmで維持され、排気量は1991ccから2216 ccへと拡大された。ただし、スペック上の出力は「405」用「100B」スペックから変わらない105psにとどまったものの、低・中速域でのトルクは2L時代よりも高められ、ドライバビリティは格段に向上したと言われている。 また406ではリアサスペンションも、従来すべてのブリストル車に採用されていた旧式なAブラケットを廃止して、より現代的なワッツリンクに変更。ワッツリンクを採用した世界初の量産サルーンのひとつとなったといわれている。 加えて、406では前/後輪ともにダンロップ製のディスクブレーキを備え、かの名作「ジャガーMk2」と並んで、世界で最も早い時期に4輪ディスクブレーキを備えた乗用サルーンのひとつとも称されている。 1961年をもって、174台を生産した段階で406はフェードアウト。それは同時に、旧き佳きブリストル自社製の直6ユニットの終焉も意味していた。つまり406は、自動車史に残る名機、ブリストル6気筒を搭載した最後のモデルだったのだ。
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