あなたの知らない英国車「ブリストル406」とは? BMW製6気筒と兄弟といわれる直6エンジンで気持ちよく走るコツをお教えします【旧車ソムリエ】
1950年代における、世界最良のミドル級乗用車用エンジン
今回の取材にご協力いただいたのは、日本で唯一、ブリストル製クラシックカーの専門ディーラーとして活動する「ブリストル研究所」。ロールス・ロイス/ベントレーの世界的コレクターとして、かつて埼玉県加須市に「ワクイミュージアム」を開設した涌井清春氏が新たなチャレンジとして開設した、ちょっと変わったスペシャルショップである。 そして今回の主役であるブリストル406は、イギリスでも唯一のブリストル専門店であり、ブリストル研究所にとってはビジネスパートナーでもある「SLJ Hackett」社から、2022年に輸入した個体。濃いメタリック・グリーンのボディに、クリームのレザーインテリアを組み合わせ、内外装ともきわめて美しいコンディションにある。 また機関系については、もともと良い状態で日本へとやってきたうえに、さらに国内で再調整を重ねた結果、現在ではブリストル自社製6気筒エンジンの素晴らしさを存分に味わえるメカニカルコンディションを誇っている。 じつをいえば、20年以上にわたって涌井氏とともに歩んできた筆者は、ブリストル研究所においても「主任研究員」なる肩書きとともに密接に関与しており、今回の取材車両にも頻繁に乗っているのだが、乗るたびに新鮮な感動を与えてくれるのがブリストルというクルマである。なかでも、このクルマの魅力を決定づけている要素として、直列6気筒OHVエンジンの存在を挙げないわけにはゆくまい。 第二次世界大戦前の独BMWにて、「328」に代表される一連の名作を設計したフリッツ・フィードラー技師が、戦後一時的にブリストルに招聘されて開発した直6エンジンは、BMW製6気筒の兄弟ともいえる。 ともに凝った設計のプッシュロッド+ロッカーアームでDOHCにも匹敵する燃焼効率を獲得。その高性能とスムーズさから、当時の自動車メディアは「1950~60年代における世界最良のミドル級乗用車エンジン」と絶賛したという。しかもこのエンジンはチューニングを施すことで、ル・マン24時間レースで2年連続クラス1-2-3フィニッシュ(1954~55年)を達成するなど、レーシングユニットとしても素晴らしい実績を残しているのだ。 間近に見る406のスタイリングは、航空機的な流線型を強調した「401」~「405」までの先達たちに比べると、かなり重厚な3ボックス型。またインテリアのフィニッシュは同時代のベントレーと比べても、間違いなく同レベルにある。さらに、ウッドパネルの玉杢(たまもく)の細やかさなどをまじまじと見ると、もしかしたらベントレーの量産モデルよりも上では……? とさえ思わせる、豪奢な雰囲気を漂わせていることがわかってくる。
【関連記事】
- 【画像】小ぶりなベントレー? 航空機メーカー由来の高級車「ブリストル406」を見る(28枚)
- ■ブリストル研究所主任研究員が解説! 3350万円で落札された「450ル・マン」はいかにして復刻されたのか?
- ■60年前の「世界一ゴージャスなコンバーチブル」に乗ってみた! ロールス・ロイス「シルヴァークラウドIII」にベントレーのボディを架装した特別な1台とは【旧車ソムリエ】
- ■元祖アルピーヌ「A110」は意外と快適。もちろん徹底的にナチュラルなコーナーワークは感動ものでした【旧車ソムリエ】
- ■ 「キドニーグリル」なのにBMWじゃない「ブリストル」って…? 航空機メーカーが作った「ル・マン24時間」優勝経験もある高級パーソナルカーでした