ブラックインターンが横行 就活につけ込み長期化で学生を搾取
若手労働者を中心に労働問題に関する支援を行うNPO法人POSSEには、インターンに関する学生からの問い合わせが多数寄せられている。「報酬が最低賃金を下回る、日給2000円だった」「実態がアルバイト業務であるのに、インターンだとして給与を支払われなかった」など、ブラックな労働環境が露呈する。 代表を務める今野晴貴氏は「インターンであるかどうかにかかわらず、実質的な労働と見なされれば、企業は給与を支払う義務が生じる。ブラックインターンに関する問い合わせは増加傾向にある」と明かす。 このようなインターンは、ほかにも複数存在している。就活支援サイト「dodaキャンパス」の岡本信也編集長は、「学生が主体になるような良質な長期インターンは少ない。人の集まりくい職種をインターンと称して募集していることもある」と話す。 それでも学生が長期インターンに参加するのは、新卒採用において、インターン経験が有利に働くという実情があるからだ。岡本氏は「長期インターンの経験をガクチカにする学生は増加している。採用を行う企業側にも、長期インターンを経験した学生は社会人としての基礎的なスキルが備わっているとして、一定のニーズがある」と指摘する。 企業に提出するエントリーシート(ES)でも、たいていの企業が「インターンの経験について教えてください」という記述欄を設けている。先述した会社が「A社・B社などに内定」とうたっているように、多くの長期インターンの募集要項には、インターン経験者の内定実績として大企業の名前がずらりと並ぶ。インターン生にとって長期インターンは、他社の採用選考で有利になる手段となっているのが現状だ。 ●新卒採用の早期化が弊害に ブラックインターンは、新卒採用が早期化しすぎたことの弊害ともいえる。一般的に採用選考が始まる大学3年生の春(2~3月)までに、学業やスポーツなどで目立った成果を残すことは困難だ。そのため、採用選考が始まる前までに長期インターンを終えておこうとする学生が多い。不人気な仕事や実質的に単なる安価なアルバイトだとしてもインターンというラベルを貼るだけで、何かしらのインターンをする必要に迫られた学生の見る目は変わる。 ブラックインターンに参加した学生が、違法性について声を上げるケースも少ない。労働法に詳しくない多くの学生が違法性を認知することは難しく、企業側から「これはインターンだから」と言われて、給与などについても丸め込まれるケースが多い。一方、学生にとっても、実際にインターン経験によって採用選考に有利になったと感じられれば、実態がブラックであっても問題視することはないだろう。先述した住宅設備の販売会社はインターンの特設ページを設けており、ホンモノかどうかは分からないが、インターン卒業生による会社への感謝の作文が、多数掲載されている。 もっとも、全体的に見ればブラックインターンは一部にとどまっているという。企業に対する学生の評判は、SNSなどで拡散され、企業の採用活動やブランドイメージにも影響する可能性がある。ブラックインターンを実施すれば、すぐに悪評が立ち、ブラック企業の烙印(らくいん)を押されかねない。そのため、時給制で学生を雇用し、適切な給与を支払い、学生の満足度を高めるため、インターン制度を改善したり工夫したりするなどの努力をしている企業も多い。 インターン自体は、学生と企業のミスマッチを防ぐための取り組みとして有効な手段だ。だが、制度改正を経てもなお実態に追いついていないのが現状だ。ブラックインターンをなくすためには、さらなるルール作りが不可欠だ。
佐々木 大智