2023年に甲子園を優勝した慶應義塾高校野球部でも取り入れられた「アスリート・センタード・コーチング」とは? 世界的に注目されている日本武道の「守破離(しゅはり)」との共通点
限界突破の哲学 なぜ日本武道は世界で愛されるのか? #1
「アスリート・センタード・コーチング」という指導法が現在一般的になっている。選手の欠点を批判するのではなく、選手たち自身が主体的に考えることを促し、長所を伸ばしていくという考え方だ。この指導法は、日本の武道では「守破離」という考え方で古くから実践されてきたというが、その共通点とは一体何か。 【図】武道を学ぶ過程「守破離」とは? 書籍『限界突破の哲学』より一部を抜粋・再構成し、その精神性を学ぶ。
円環を成す「守破離」
武道や茶道における修行の段階を表す言葉に、「守破離(しゅはり)」という概念があります。現在ではスポーツやビジネスなど幅広いジャンルで、学びのプロセスを説明する時にも使われています。 辞書を引いてみると、 「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。 「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。 「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。 (『デジタル大辞泉』) とあります。 この守破離は、現代剣道の修行にも当てはまり、 守は、先生に学ぶ。 破は、仲間と鍛錬。 離は、自分で工夫。 という円環を成しているように思われます(図2)。 具体的に説明していきましょう。 最初の段階は先生から、いろいろなことを学びます。基礎知識や基本技、応用技や専門知識、また「武道をどのように生活に活いかすか?」といった武道の価値観も学ぶことになります。先生が生徒に、自分の持っているいろいろな情報を提供するわけです。 これが「守」の段階ですが、伝統的な日本の教育観だと、「黙ってやれ」というような、先生の言うことに絶対服従するイメージがあります。 「守」は、守るの守。言いつけを守る、きついことや理不尽なことでも従わなければならないというイメージです。 けれどもずっと修行してきた私の実感としては、必ずしもそうではないと思っています。伝統武道の世界でも、学ぶ側に主体性はあります。 スポーツの世界では、「アスリート・センタード・コーチング(選手中心の指導法)」が主流となりつつありますが、近年、この自分で考えさせる指導法は、武道の世界でも注目されていて、特に海外で流行しています。上から一方的に指導するのではなく、選手に課題を与えて、自分で考えさせる指導法です。 そして、もともと伝統的な武道の修行にも、「自分で考えさせる」要素があると私は思っています。
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