私大入学者の過半数を超える安易な「年内入試」、総合型選抜や学校推薦型選抜が広まる傾向への疑問符
■ 中高一貫の私立でも対照的な大学進学ルート 入試形態別の進学割合を公表している私立の中高一貫校の中から2校を比較したのが別掲の表である(数字は大学進学者に占める割合)。 A校では一般選抜は2割もいないのに対し、B校はほとんどが一般選抜での進学となっている。同じ中高一貫校でも進学ルートはこれほど対照的なのだ。 また、A校は学校推薦型選抜の割合がいちばん高く(指定校制が38.8%、公募制が7.0%)、総合型選抜も一般選抜の倍以上いる。両方合わせると、年内入試で82.7%が決まっていることが分かる。 一方、B校の生徒は自分が行きたい大学・学部から指定校枠が来ていたり、自分が探究しているテーマにつながる大学・学部に総合型選抜で進めたりする場合以外は、大多数は一般選抜に向かっている。 A校では3学期の授業がほとんど機能していないが、B校の生徒はほぼ全員が大学入学共通テストを受け、平均すると11校ほどに出願している(一般選抜で8校、共通テスト利用方式で3校)。 学校のレベルによってこれほど大学進学ルートは異なっているのが現実なのだ。
■ すでに高校、大学で起きている年内入試のひずみ 最近では「年内入試が年々増加している」という現状報告的な報道も多く見受けられるが、これがもたらすひずみにも目を向けておきたい。 前述したように、それぞれの立場によって“ニーズ”はあるにせよ、このままでは高校も大学も「何でもあり」のような様相を呈してしまうと危惧されるからだ。具体的に以下のような実態がすでに起きている。 【高校】 ・卒業生が160名しかいない学校にも600名分の指定校枠が来ているということがごく普通にある(大学による指定校枠の乱発) ・以前からあることだが、上位コースの生徒には指定校枠は使わせない ・人気大学の指定校枠をめぐる校内競争が熾烈になっている ・英語外部検定利用入試の増加(低学年から外部試験を受けまくるケースも) 【大学】 ・もはや指定校枠を提示しても受験生を獲得できない ・一般選抜では定員が埋まらない学部・学科の定員を埋めるために高大連携協定を結ぶ ・学校推薦型選抜は専願が基本だが、併願可能な学校推薦型選抜も登場 ・基礎学力テストを課す形もあり、一般選抜の前倒しのような入試も登場→偏差値の低い大学の一般選抜の受験者がいなくなる