私大入学者の過半数を超える安易な「年内入試」、総合型選抜や学校推薦型選抜が広まる傾向への疑問符
■ 年内入試に対する大学、受験生、保護者、高校の「ホンネ」 もう一つ、年内入試が広がる要因がある。“早くに決まる”ということだ。大学、受験生、保護者、高校それぞれの立場から考察してみよう。 【大学側】 2023年度入試において53%もの私立大学が定員を充足できなかった。また先ごろ公表された文科省の試算によると、18歳人口の減少が進んで2040年~2050年の大学受験人口は現在より13万人も減少するとされている。そうなると大学は現在の数が維持できず、閉校・統合を余儀なくされる。また受験人口が減少するということは相対的に優秀な受験生も減るということだ。黙っていても高学力層が受験してくる難関大学を除けば、他大学に先駆けて入学者を確保しようという動きになるのは必然とも言える。偏差値の低い大学は、一般選抜まで待っても受験生が来てくれる保証はないからだ。 【受験生】 受験生の中にはあまり勉強が得意ではない、無理してまで頑張ろうという気もないという層がかなりの割合でいる。今の学力、現在している学習で入れそうな大学を探すという生徒が大勢いるのが現実である。早いとこ合格を決めて安心したい(遊びたい)というのがホンネだ。早く決まる生徒が多い学校ほど、浮足立って「年内入試で決めたい」と考える生徒が出現する。 【保護者側】 早く安心したいという心理は保護者も同様である。さらに一般選抜に回って10もの大学・学部を受験するようになったら受験料だけでも大変だからと、切実な事情の家庭もある。 【高校側】 生徒の学力が高くない学校では、「うちの生徒は一般選抜で中堅以上の大学に受かる保証はない」と考え、指定校推薦の利用、ないしは探究学習で生徒が研究したことを生かせそうな大学を探すなどマッチングに力を入れて、送り出す。 こうした4者それぞれのニーズが加わるわけだから、年内入試が拡大する方向になるのも当然と言える。