89歳の角野栄子が憧れる“愛さずにはいられないおじさん”とは? 本との出会いや日々の読書量も語る【私の愛読書】
さまざまなジャンルで活躍する著名人たちに、お気に入りの一冊をご紹介いただく連載「私の愛読書」。この度ご登場いただくのは児童文学作家の角野栄子さん。映画『カラフルな魔女』の公開、「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)の開館といったニュースも続き、このほど「魔女」について書いたエッセイ『魔女のまなざし』(白泉社:『魔女のひきだし』を改題の上、書き下ろしを加筆)も新装版で出版されるとのこと。89歳になった現在も精力的に執筆を続ける角野さんの選ぶ「愛読書」とは?
人間のおもしろさを感じるオースター、人間らしいブコウスキー
――最初の一冊は『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』(ポール・オースター:編、柴田元幸、他:訳/新潮文庫)ですね。
角野栄子さん(以下、角野):この本はアメリカのごくごく素人の人がラジオ局に応募したエッセイを、オースターが選んで発表した本なんですけど、本当に面白いんです。「見知らぬ隣人」「戦争」「愛」「死」「夢」とか色々なことについて書かれていて、短いのも長いのもあるし、とにかくとらわれない自由な心が書いた作品なんです。 オースターは冒頭「短編を書いてくれっていう注文がいっぱいくるんだけど、もうそんなに書けない。そしたら奥さんが『アメリカ中の人に書いてもらったらどう?』って。そこから番組がはじまったら、すごく面白いものが集まった」みたいに書いているんですけど、とにかく一つ一つに書いている人の姿や生活が見えるようなのね。不思議なこともあってびっくりするし、とにかく面白いんです。 ――どうやって出会ったんですか? 角野:オースターは好きなので、ときどき本屋さんに行っては見ていて。この本は1巻を買って面白かったから2巻も出たときに買いました。短いものだから、ちょっと読むのも面白いですし、なんかやめられなくなります。本当に「人間っておもしろいなー」って思います。 ――そして次はブコウスキーの『死をポケットに入れて』(チャールズ・ブコウスキー:著、中川五郎:訳/河出書房新社)。ずいぶん毛色が違いますが…。