不発で甲子園を去る“山梨のデスパイネ”野村健太はプロか進学かで苦悩
あの輝きはどこにいってしまったのか。高校通算53発を誇るプロ注目のスラッガー、山梨学院の野村健太右翼手(3年)は10日、甲子園で行われた熊本工との1回戦で3安打したものの、待望の一発は出ず、延長12回にサヨナラ本塁打を浴びて姿を消すことになった。昨夏、今センバツと続けて3本塁打を放ち、その超高校級のパワーから“山梨のデスパイネ”の異名で呼ばれたが、ネット裏のスカウトの評価も上昇とはいかず、野村は、プロか進学かで悩んでいるという。 2-2で迎えた延長12回二死二塁。勝負を決める絶好の場面で5番打者の野村に打席が回ってきた。カウント2-0から115キロの変化球を強振したが、弾んだゴロは三塁正面。力んだ。 「甘いボールを仕留めることができませんでした」 一塁を駆け抜けた野村は天を仰ぐ。その裏、一死から山口環生にバックスクリーンに飛び込むアーチを浴びてサヨナラ負け……野村は、涙を拭って、甲子園の土を袋につめた。 “山梨のデスパイネ”の異名で呼ばれる注目のスラッガーだった。180センチ、90キロ弱の堂々たる体格。2年生だった昨夏の高知商戦では左翼席中段まで運び、一躍脚光を浴びた。 さらに、今年のセンバツでは、札幌第一戦で左中間席とバックスクリーン左に130メートル弾をぶち込んだ。ともに打った瞬間に、それと分かる高校生離れした初速のスピードと弾道。大会史上23人目となる1試合2本塁打で、並外れた怪力をアピールした。 スカウト陣からは、「あそこまでボールを呼び込んで打てる打者はそうそういない。柔軟性を兼ね備えて振りがシャープ、リストの強さは天性のもの」、「巨人にいた村田修一のようなタイプ。体はそれほど大きくないが、飛ばす力がある」、「パンチ力はメジャー級。デスパイネよりいいのでは。マイク・ピアザの打球の角度によく似ている」と賛辞が続いた。 3度目の甲子園出場を決め、試合前には「3季連続となるホームランを打ちたいです。甲子園では調子に関係なく打てそうな気がします」と、意気込んでいた。だが、この日、3安打は放ったものの、待望の一発は生まれなかった。