「福島12市町村」が舞台の異色ドラマ『風のふく島』。あえて「復興を直球で描く作品」にしなかった理由
3.11の原発事故に伴う避難指示対象地域「福島12市町村」(※)を舞台に、実在の移住者たちにフォーカスした1話完結のオムニバスドラマ『風のふく島』が1月10日より放送開始する。 【写真】第1話で馬術競技・元日本代表の青年を演じた佐藤大樹 実在する場所やモデルとなる人物への取材から着想を得てストーリー化した本作。企画・プロデュースを手掛けるのは、杉野遥亮主演『直ちゃんは小学三年生(五年生)』や本郷奏多・大沢一菜W主演『姪のメイ』のプロデューサーである青野華生子さんだ。 豪華キャスト陣と実力派の監督・脚本家が揃っている本作の制作の裏側について青野さんに聞いたインタビュー前編に続き、後編となる本記事では、「福島12市町村の避難区域の物語」をテーマにしながらも、あえて「復興を直球で描くドラマ」にしなかった理由について、さらに深く話を聞いた。 ※福島12市町村は田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村のこと。
『姪のメイ』は福島で「月9」より高視聴率だった
――東日本大震災からまもなく14年になりますが、『風のふく島』を制作するにあたり、福島12市町村と移住者の方々を取材して、どんな印象を受けましたか。 青野華生子P(以下、青野P):山側と海側でそれぞれ違うんですが、特に海側は開発がどんどん進んでいって、新しい建物ができている一方、未だに震災当時のまま残っている建物もあって、そうした光景を見るたび不思議な気持ちになります。 本作で「移住者」をテーマにして、『風のふく島』というタイトルにしたのは、この地に新しい風が吹き込んでいるという意味が込められていて、悲劇の場所で終わるのではなく、ここからどうやってそれを乗り越えていくのかが語られる場所になってほしいという思いがあります。 ――もともとの地元住民の方々と移住者の方々はどんな関係になっているのでしょう。 青野P:それもたぶん市町村によって違っていて、本当にウェルカムで迎え入れてくれたという話もあれば、外から来た人たちをなかなか受け入れられないという話も聞きます。考え方もいろいろで。 「移住者」と言いつつ、駿河太郎さん主演の広野町の話(第2話)や桜井ユキさん主演の楢葉町の話(第3話)など、Uターン組もいるんですよ。桜井さんのモデルになった方などは福島の外のことも中のことも知っているから、間を取り持つ役目を今もされています。 ――移住者同士の交流もあるのですか。 青野P:そうですね。福島12市町村では移住に力を入れていて、コミュニティでの助け合いを感じる場面も多いです。富岡町の話(第9話)のモデルになっている方にご挨拶に行ったとき、双葉町の元復興副大臣がその方の家にいて、社労士の免許を持っているからと会社の就業規則を見てあげていたんです。それ以外にも、お互いのスキルで助け合っている様子を目の当たりにして、面白いなと思いました。 ――ドラマを作ることに対して皆さんの反応はいかがでしたか。 青野P:地元や自分の地域がテレビに出ることを皆さん、喜んでくださっていて。同じく福島12市町村を描いた『姪のメイ』(2023年)のときは、福島テレビではフジテレビの「月9」より視聴率が良かったらしいです(笑)。今回もエキストラや方言指導など、地元の一般の方々に協力してもらっているんですが、「今までのドラマ作品などは(福島について)ネガティブなものが多かったから、嬉しい」と言ってくださる方が多くて、それがすごく励みになりました。