映像作家・空音央が初の長編劇映画「HAPPYEND」で見せたこだわりの演出術
――では、サントラを手掛けられたリア・オユヤン・ルスリ(Lia Ouyang Rusli)さんには、どんなふうに発注されたんでしょうか?
空:彼は映画音楽のスコアをやりつつ、オユヤン(OHYUNG)というテクノ・アンビエントのソロプロジェクトもやっている人で、本作にはピッタリだと思いました。本作における音楽の使い方には、最初から方針があったんです。ユウタとコウが僕と同い年の33歳になって、自分の高校時代を思い出したらどういう感情になるんだろう?というのを想像して音楽を作ってもらったんです。近未来という設定なのに、どこか過去を思い出しているような。時制が交差しているような物語を、古典的なピアノにシンセを混ぜた音楽で表現してくれました。
――本作は脚本や演出はもとより、撮影や音楽など、隅々まで考え抜いて作られた作品なんですね。
空:大学を卒業してからフリーランスで映像の仕事をやっていたんですけど、フリーランスだと、企画、脚本、監督、撮影、編集、サウンドデザインまで全部自分でやらなければいけない。僕は全工程が好きなんですけど、作品を作っていく中で「こういうことを試してみたい」という課題がいくつか出てきて。今回はそれを全部、作品にぶつけました。初めてのフィクション映画であり、ある意味、映画監督としてのデビュー作とも言える本作では、やってみたかったことを全部やってみたかったんです。
「エドワード・ヤン監督は永遠のアイドル」
――「HAPPYEND」を撮るにあたって、リファレンスとして観直した作品はありました?
空:作品を作る時に必ず観直すのは、エドワード・ヤン監督の「牯嶺街少年殺人事件」です。あとはホウ・シャオシェンの「風櫃の少年」とかツァイ・ミンリャンの「青春神話」とか。
――台湾映画が続きますね。
空:台湾映画はすごく好きですね。あとファスビンダーの「マリア・ブラウンの結婚」。ジャック・タチやダグラス・サークの作品なんかも好きです。