わずか2本のシュートで2得点 生駒が前回王者の奈良育英を下し2大会ぶり2回目のインターハイへ
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)奈良予選は、決勝戦が6月8日に新庄健民グラウンドにて開催され、2年連続の優勝を狙う王者・奈良育英と、2年前の覇者・生駒が激突。膠着した展開となった試合は、後半12分にセットプレーから生駒のCB仲川泰地(2年)が頭で合わせて先制。試合終了間際にも途中出場のMF山本大翔(3年)が1点を追加し、2-0で奈良育英を下し、2大会ぶり2回目となる全国大会出場を決めた。 【フォトギャラリー】奈良育英 vs 生駒 奈良育英の猛攻を耐えた末に、わずか2本のシュートで2得点をあげ会心の勝利。生駒は持ち前の前線からのハイプレスと粘り強い守備を武器に、2大会ぶりの全国切符を獲得した。勝利の立役者となったのは、CBコンビだ。キャプテンマークをまく久保田蒼大(3年)は、「前半から耐えよう、守り切ろうと話していた。全員で走って、全員で勝つぞと言っていたので、最後は気持ちだった」と、タフな展開となった試合を振り返った。一方守備面だけでなく、先制ゴールもあげ攻守にチームを救った仲川は「相手は最初から点を取りにくると思っていたので、前半は耐えて後半で点を取るというプラン通りの展開になった」と、会心の笑みを見せた。 前半からペースを握ったのは奈良育英。FW藤川陽太(3年)が、幾度となく生駒DF陣の背後を取り、味方からのスルーパスに抜け出すプレーを見せるものの、生駒のCBコンビが懸命のカバーリングを見せて、決定機を作らせない。また前半だけでコーナーキック5本、直接FK6本を数えた奈良育英のセットプレーの場面でも、プレーメーカー・MF有友瑠(3年)のキックが何度も惜しい場面を作るが、守護神・石丸裕基(3年)を中心に今予選でわずか1失点の堅牢な生駒DF陣がゴールを許さなかった。 生駒・古田泰士監督が「思った以上に前半から相手が圧力をかけてきたけど、そこで点を取られなかったのが勝因」と語った前半を狙いどおりの展開で終えた生駒は、後半開始からMF山本とFW渡邊耕太郎を投入。前線からのハイプレスを維持しつつ、攻撃の圧力を強めていく。スコアが動いたのは後半12分、生駒が左サイドの突破から得たCKから。こぼれ球に反応した仲川が、「CK時の奈良育英のマークの仕方は対策していたので、練習通りいけました」と自賛するヘディングシュートで先制。失点を許した奈良育英は、徐々に攻勢を強め、藤川・有友を中心に何度も生駒ゴールに迫るが、最後のフィニッシュで精度を欠く。前がかりになった奈良育英の隙をつき、後半ATには左サイドからペナルティエリアに侵入したFW山口大翔のパスを山口が流し込んで、生駒が追加点。大会を通じて安定したDFを見せた生駒が2大会ぶりの優勝を果たした。 この日の鉄壁の転機となったのは1週間前に行われた準決勝・大和広陵戦(2-1で勝利)。集中力に欠ける中、前半開始早々にカウンターから今大会唯一となる失点を喫した。「広陵戦はふわふわしたまま入ってしまったので、ゲームの入りをしっかりやろうと全員で共通意識をもって試合に挑んだ」(久保田)というこの日は序盤から好守を連発し、クリーンシートへと繋げた。そんなDF陣の奮闘に古田監督も「守備はやればやるほど力がついてくるので、自信になっているんじゃないかと思う」と目を細めた。 これで2大会ぶり2度目となる全国大会への挑戦権を得た。同会場で行われた2年前の決勝戦はスタンドで応援していたという久保田は、「(当時の)3年生はカッコよかったので、憧れはありました」と同じ舞台での勝利に感無量。本大会ではサポートメンバーとして裏からチームを支えたが、その先輩たちは昌平高校の前に0-3で敗戦。「プレー強度も違ったし、差を感じました」と当時を振り返る。今度は自分たちの番。「とにかく強いところと対戦したい。相手にボールをもたれるとは思うけど、そこで自分たちの強みを出したい。一勝を目指します」と意気込みを語った。 県立の普通科高校だけに、グラウンドは小さく、練習環境は決して良好とは言えない中でも、「密集でのプレーなどにこだわってきた」という生駒。全国的には無名の公立高校がハイプレスを軸にした堅牢な守備を武器に全国大会での旋風を虎視眈々と狙う。 (文・写真=梅本タツヤ)