阪神・近本 国内FA権取得見据え、決意の単年契約「大事なシーズンに」 生え抜き最速1000安打も視界
阪神・近本光司外野手(30)が10日、兵庫県西宮市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、5000万円増の年俸3億7000万円でサインした。来季中に国内フリーエージェント(FA)権の取得条件を満たす見込みで、球団から複数年契約を提示されたが、単年を選択した。球団の日本選手では、レジェンド・藤村富美男を上回り最速の通算1000安打到達も視野に入る来季は、オフの去就にも大きな注目が集まる。 近本はインタビュアーから契約年数を問われ、ふた呼吸ほど間を置いて言った。「単年です」。来季中の国内FA権取得が決定的な30歳に対し、球団側は複数年を提示。熱い誠意に感謝を示しつつ、決意の表情で語った。 「1年で勝負したい。僕はFAを取っていないですし、通常であれば単年の契約。(複数年への)考えはありましたし話も聞いた。球団の思いも聞かせてもらって、それでも単年でいいかな、と」 嶌村聡球団本部長は近本に「ぜひ(今後も)タイガースでやっていこうよ」と熱意を伝えた上で、「複数年を選ぶもよし、単年を選んでもよしと、そんな考え方で話をさせてもらった」と説明。6シーズンを走り切った男へ敬意を示した。 近本の視線は早くも25年へ向く。一昨年は新型コロナ感染、昨年は死球骨折で離脱を余儀なくされたが、今季は調子の波こそあれど“無傷”で戦い抜いた。「ケガなく終われたというのは良かった」と安どもそこそこに、来季については熱のこもった口調で言った。「本当に大事なシーズンになる」。国内FA権取得が懸かることだけが理由ではない。幾多の偉業に挑む一年になるからだ。 まずは自身初の全143試合出場。新型コロナの影響で120試合に短縮された20年を除き、まだ「皆勤」はない。「ケガしてしまったら、目標もクソもない。試合に出られるよう、しっかり体に気を付けて頑張る」と断言。「1番・中堅」の死守こそ、責務だ。 その先に、球団生え抜き最速の通算1000安打を思い描く。目下804試合で同933安打。残り67本の記録スピードにも注目が集まる。猛虎の日本選手で、最少試合数での大台は50年の「初代ミスタータイガース」藤村富美男で、864試合。59試合以内で近本が到達すれば、新たな歴史の扉が開く。19年には59試合時点で73安打、昨年も68安打しており、不可能な数字ではない。虎のヒットマンが球史に名を刻む。 「チーム一丸となって、新しい藤川監督と一緒にまず1勝して、最終的に優勝できるように、頑張りたい」 V奪回へけん引する活躍で、シーズンを数々の勲章で彩る。その先のオフには、背番号5の国内FA市場をめぐる「狂騒曲」が響き渡る。 (八木 勇磨) ○…近本は通算1000安打到達へあと67安打。阪神在籍中の選手の到達は15年のマートンまで24人。プロ7年目は07年赤星憲広、10年鳥谷敬に並び、日本選手全体でもプロ野球最速になる。なお、年数でのプロ野球最速到達は前出のマートン(神)で来日6年目。 ○…試合数のプロ野球最速は99年イチロー(オ)の757試合。全て阪神在籍中に1000安打した選手ではマートンの809試合。阪神生え抜き選手に限れば最速は50年藤村富美男の864試合。赤星が880試合で続く。目下通算804試合出場の近本が球団新記録を樹立するには来季、出場59試合までに67安打が必要。過去の出場59試合目の安打数は19年73、20年63、21年65、22年65、23年68、24年63で、19、23年の2度クリアしている。