W杯8強を目指す森保ジャパンにも“還元”される堂安律の変貌「俺、こんなこともできるようになったんや」【現地発】
試行錯誤の連続の中で試行し続ける堂安
もっとも、ブンデスリーガ初采配を振るうシュースター監督だけに、序盤は試行錯誤の連続ではあった。 38歳のドイツ人指揮官は、ボールを持った時にオフェンシブな選手が中央スペースでパスを受け、最短距離でゴールを狙うという新機軸を打ち出した。新たなオプションとしてとても興味深いチャレンジではあるが、狙いが集中しすぎるあまり、相手守備を揺さぶれず……。攻撃陣が自分のタイミングでボールを受けられないジレンマもそこにはあった。 堂安もこんな風に話していたことがある。 「中で受けようという意識はありますけど、もっと外ではりたいところは正直ある。1対1の場面が正直去年より明らかに減っている。それはちょっと監督と話したいなと思います」 あるいは足元でのポゼッション意識が強まり、チームからダイナミックさが少し失われた点も指摘されていた。サイドでの起点作りや、ドリブルによる個人技勝負での揺さぶりがなければ、相手守備陣は中央からの攻撃をケアすればいいだけになってしまう。 「もっとサイドを自然に使ってくれてもいいのになと思いながら。グレゴ(オーストリア代表FWミヒャエル・グレゴリチュ)も入ってる中で、もっとクロスを多くあげたらなとか。ちょっとクリアじゃなかったですね、僕らのアイディアが」 堂安はそう試合を振りかえることもあった。シュースター監督も自分が志向するサッカーへの思いを大事した上で、チームとしての機能性を高めるために自分達の武器をどのように使うのかを模索している。 2024年終盤にはグレゴリチュとルーカス・ヘーラーの二人を同時に起用。速さとコンビネーションだけではなく、高さもうまく組み入れだした。堂安はこの戦略にとても好印象を抱いているようだった。 「僕たちが今年からやりだしたポゼッションをやってる中で、相手が少しずつそこを切ってきている。そうしたときにロングボールという選択肢が出てきた。グレゴの良さですし、彼がいるおかげで、僕が近くにいればボールが転がってくる。新しい戦術としていいオプションかなと思います」 試合はいつも自分たちのイメージ通りに展開するわけではない。ましてや、練り上げてき計画がそのままうまくいく保証もない。サッカーは相手あってのスポーツ。相手も対策を練ってくる。2の策、3の策と様々な手札を持ちながら、それぞれの質を高めていくことは、コンスタントに好結果を残すために避けては通れない道だ。 自分たちの良さをどのように出すか。そして相手の強さをどのように消すのか。試合の中で選手が瞬時に微調整をし、適切なバリエーションで攻守に効果的なプレーができるようになることは、ワールドカップでの8強以上を目標とする日本代表としても極めて重要なポイントだろう。 その意味でも、いま堂安がフライブルクで続ける取り組みと、そこから見れる本人の成長は興味深い。日本代表が世界で結果を出す上で、とても示唆に富んだ内容が含まれているのではないだろうか。 [取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]