これからの幼児教育、もう「学歴だけ」では食べていけない社会で子育てする親の「3つの悩み」に専門家が答える
今、幼児教育に注目が集まっている。高学歴なら有名企業に就職でき、定年まで同じ会社で勤め上げるという時代ではなくなっているからだ。困難にあったとき、しなやかに生き抜いていく力をつけるためには、幼児教育から見直すべき時期に来ているという。 【画像】日本はなぜ子育てが世界一難しい国になったか?50年で変わったこと それなら、いったいどう子どもを育てたらよいのか? そんな令和の親たちの悩みに答える本が出版された。『スイング幼児教室が教える 冒険力の育て方』の著者・矢野文彦さんは、「小学校受験の試験問題には、将来を見据えた幼児教育のヒントが詰まっている」という。 前編記事「慶應、早稲田、青学、雙葉「小学校の最難関校」が、これからの受験で求めている「4つの力」…平成とはココが違う」に引き続き、最難関小学校合格率の高さで知られる「スイング幼児教室」代表の矢野さんに、悩める令和の親たちに向けて「子育ての解決策」を聞いた。
「生きていく力(レジリエンス)」を身につけさせる
――いわゆる「受験勉強」とは異なった視点ですね。 矢野:はい。入学を希望する子どもたちには、学力だけという、詰め込み式の準備で得られるような紋切り型の能力ではなく、「他者を尊重できること」や、「自分のことは自分でできる生活力」「自らの想いを言葉や形にして伝える表現力」など、「人間としての総合的な力」を求めています。そして、これらは子どもたちの未来に必ず役に立つ能力です。 ――なるほど、確かに社会に出るとさまざまな能力が求められますね。 矢野:そうなんです。私たちが社会に出て気づいたことは、人として一番大事なものは、学歴ではなく、人と人のつながりや絆、レジリエンス(困難にあってもしなやかに回復する力)だということです。 どう心豊かに暮らしていくか、ストレスに対してどう向き合っていくか、またストレスから上手に逃げる方法。そういった「生きていく力」が大事だと気づいた世代が、「令和の親たち」だと思います。 ――昭和や平成の親と、どこが違うのですか。 矢野:昭和の高度成長期を経験した親たちは、子どもたちがある程度の学力や学歴を持って社会に出れば、一定の安定した人生が送れると信じていました。そのために、中学・高校・大学の受験勉強を一生懸命子どもたちに推奨していたのです。 しかし、「令和の時代の親たち」は、コロナ禍などで業務の縮小や解雇など、社会基盤が足元から崩れるといった「乱世の時代」を経験しています。その中で子どもを育てているのです。 ――時代が変わってきているのですね。 矢野:学歴を重要視していた昭和の親に育てられた「令和の親たち」は、今、過去の経験や知見を活かせずにとても悩んでいます。子どもの将来を考えると、高学歴というブランド志向から外れないでほしい気持ちもあるけれど、それだけでは、これからの社会は生き抜けない時代であることにも気づいている。 その中で、考え過ぎたり、頑張り過ぎて心が疲れてしまう親も多いと思います。 だからこそ、今、教育を見直す時期に来ていると思います。「令和の親たち」は、昭和の親たちから学んできた考え方や社会のシステムに捉われずに、自分たちなりの新しい子育てスタイルを、ひとりひとりの親たちが創造していく必要があります。 長く続いてきた慣習や社会の古いシステムの良いところだけを受け入れながら、新しいかたちを皆さんでつくっていくとよいのではないでしょうか。