今さら聞けない「惨事便乗型資本主義」とは? シリーズ「世界の賢人たち」
一部の人たちが潤っただけだ!
政権を奪取したチリの軍部はアジェンデ支持派を次々と処刑し、チリ社会は混沌状態に陥る。次に、裏でクーデターを指揮した米国は新自由主義*を掲げる経済学者たちを顧問として送り込んだ。 こうして、外資系が国内に入り込んだチリは資本主義の実験場と化した。国内の市場は貿易の自由化によって崩壊し、貧富の差は深刻になった。 クラインは、こうした惨事便乗型資本主義の営みは一部の企業や投資家を儲けさせただけだと述べる。
パンデミックが「スローダウン」のきっかけに
近年、クラインは気候変動対策に向けた活動を精力的に進めている。気候変動は「最大の世代間格差」だとして、「裕福であってもそうでなくても、気候変動はすべての若者を傷つける」と語っている。 クラインは社会の経済システムはすでに破綻しているにもかかわらず、それが「正常なこととして機能している」がゆえに、現代を生きる若い世代の人々は脆弱な存在になってしまったとも語る。 だからこそ、私たちにとっては新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)が、現状のあり方について考え直すきっかけになったと、彼女は考えている。 「このウイルスの出現によって、私たちは人とのつながりについて考え直しました。 これまでのあくせくした社会のスピードがゆっくりになれば、いろいろなことを感じられるようになります。競争に明け暮れていると、ほかの人に共感を覚える時間はほとんどありませんから」 ナオミ・クラインは海外メディアの取材に積極的に応じている。2020年には『地球が燃えている』を上梓し、若い環境活動家にも大きな影響を与えた。クラインは自書を「活動家のための弾薬」と表現する。 クーリエ・ジャポンではクラインのインタビュー記事を多数掲載している。彼女が気候変動の解決策の一つとして提示する「グリーン・ニューディール政策」についても理解が深められるので、ぜひ読んでみてほしい。
Courrier Japon