FC東京に“久保ロス”波紋なし?!永井の2発でガンバに快勝
夢と希望を抱いてスペインへ旅立った、可愛い後輩と交わした約束を必ず果たしてみせる。熱き思いを込めた雄叫びを、二度にわたってホームの味の素スタジアムの夜空へとどろかせた。 同点弾を決めたわずか2分後に勝ち越し弾を叩き込み、後半にはダメ押しの3点目をアシスト。6戦連続無敗で敵地へ乗り込んできたガンバ大阪を力でねじ伏せ、首位を快走させる白星をFC東京にもたらした殊勲のヒーロー、FW永井謙佑(30)はひとたびピッチを離れると驚くほどに謙虚だった。 「サンホが頑張ってくれたので、僕はもう詰めるだけでした。2点目もサンホがあげたクロスがよかった。あの時間帯で上手く逆転できてよかったけど、サンホのゴールをアシストするチャンスもあったので、そこは反省して次の戦いへつなげていきたい」 7日に行われた明治安田生命J1リーグ第18節。前半のキックオフからわずか5分後に、ミス絡みで先制を許す重苦しい雰囲気を振り払ったのは永井の左足と頭だった。 まずは前半38分。個の力で左サイドを突破した韓国代表MFナ・サンホ(22)が、ニアサイドへ詰めたキャプテンのMF東慶悟(28)を狙ったグラウンダーのクロスを送る。正対したガンバのDF三浦弦太(24)がとっさに伸ばした右足に当たり、ゴールとは反対方向にボールが大きく弾んだ直後だった。 誰よりも早く反応した永井が、ボールの落ち際で利き足とは逆の左足を叩きつけるように振り抜く。強烈なボレーは雨で濡れたピッチでバウンドし、さらに球速を増してガンバの守護神・東口順昭(33)を急襲。右へ飛びながらも必死に体を残した東口の右足をかすめて、ゴールのど真ん中を射抜いた。 「ボールを叩けばいけるかなと思って。(ああいう場面で)キーパーは横へ飛ぶことが多いので、叩けばタイミングがずれる。そうなればゴールになるかな、と」
2分後には久保に代わって起用されているナ・サンホが左サイドから上げたクロスに対して、身長186cmのDF金英權の前へ入り込み、先にジャンプしながら巧みに頭をヒットさせる。身長178cmの永井によってコースを変えられたボールは、ゴールの右隅へ吸い込まれていった。 後半15分には50mを5秒8で走破する自慢の韋駄天ぶりを発揮。ガンバの最終ラインの裏へ抜け出し、MF高萩洋次郎(32)のスルーパスをゴールラインぎりぎりで折り返す。ノーマークだったFWディエゴ・オリヴェイラ(29)が、得点王争いのトップに並ぶ10点目を決めた時点で勝負はついた。 「しっかり点が取れれば2点目、3点目も取れると思っていた。実際に同点にして、こっちのリズムでできたのが一番大きかったけど、逆転できているからそれでよし、とはならない。イージーなミスで先に失点しているし、もう一度、全員で気を引き締めていきたい」 2ゴール1アシストとFC東京の全得点に絡んだ永井は、首位攻防戦だった前節の横浜F・マリノス戦でも逆転ゴールをゲットしている。今シーズンのゴール数を「6」に伸ばし、FC東京でプレーした過去2シーズンであげた合計ゴール数に、J1戦線を折り返した時点で並んだ。 故障で辞退したFW鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)に代わり、約4年ぶりに招集された日本代表でも、エルサルバドル代表とのキリンチャレンジカップで代表初ゴールを含めた2発をゲットしている。30歳を超えて覚醒し始めた感のある永井に、何が起こっているのか。 「(永井)謙佑はすごく人がいいので、抜け出してそのままシュートを打てばいいのに、どうしても癖で味方にパスを出してしまうところがたびたびあった」