ソフトボール金メダリスト・上野由岐子「頑張る姿はかっこいい」と伝えたい #豊かな未来を創る人
スポーツで活躍し続けられる未来へ
── 上野さんが考える「豊かな未来」とはどのようなものですか? スポーツという観点では、子どもたちがいつでものびのびとスポーツができる環境がある社会が豊かな未来だと思います。 私が小中学生の頃は公園でキャッチボールをしたり、校庭でドッジボールをしたりと、外で遊ぶ環境が色々なところにありました。でも、今はそういう環境がどんどん少なくなっていて、公園でキャッチボールはできないし、騒がしければ怒られるし、真夏の炎天下に外で遊べないし。子どもたちのスポーツ離れが年々加速しています。実際、ソフトボール教室などで子どもたちと接する中で私自身もそれを実感しているんです。 また、今の日本はオリンピックでメダルを沢山取ることができる国です。でも、このままスポーツをできる環境やスポーツをする人が減っていったら、今の世代の子どもたちがオリンピックに出る頃にはメダルが取れない国になっているかもしれません。メダルを取れなくなってからでは手遅れなので、そうしないためにも、いつでもスポーツができるような環境を守っていきたいと思っています。
── 最後に、次世代へのメッセージをお聞かせください。 「頑張る姿はかっこいい」ということを忘れないでほしいです。 人は、人の一生懸命な姿に心を動かされると思うんです。オリンピックや甲子園などのスポーツを観て、日本以外の国の選手を応援したり、母校でもない高校を応援したり、選手が負けて涙を流す姿に共感して涙を流したりするのは、自分の全てをかけて取り組んでいる姿がかっこいいからだと思います。これはスポーツに限らず、会社も学校も同じです。やっていることが違うだけで、本質は変わりません。 また、今は順位を決めずにみんなが1番であることや、みんなが平等であることが求められがちです。昔、「2位じゃダメなんでしょうか」という言葉が流行った時にこんなことを思いました。日本で1番高い山は、1番長い川は、1番大きな湖は、と聞かれたら、多くの人が答えられるんですね。じゃあ、2番目に高い山は、2番目に大きい湖は、2番目に長い川は? どのくらいの人が答えられるでしょうか。私はそこに1番と2番の差があると思うんです。1番だからこそみんなに知ってもらえる、認めてもらえる。 だからこそみんな歯を食いしばって必死に努力するし、涙を流してでも頑張るわけです。そういう姿を見て人は心を動かされることを忘れないでほしいと思います。 人は順位がつくことで頑張れたり、劣等感を感じるから頑張れたり、逆に優越感を感じるから頑張れたりします。それがプレッシャーになってしまう子もいるかもしれません。でも、そこで背中を押すのがそれを乗り越えてきた私たち大人の役目なんです。私はそちら側の立場になった一人として誰かの背中を押したいし、「頑張る姿はかっこいい」と伝えていける人間でありたいと思っています。
取材・文・撮影 : 安藤ショウカ