デジタル時代を築いた巨人、テッド・ネルソンは日本が育てた
現代の情報社会を形作る「ハイパーテキスト」の概念。 この革新的な発想を生み出したテッド・ネルソン氏は、今もなおデジタル文化に深い影響を与え続けています。 【写真】ハイパーテキストの父と呼ばれるテッド・ネルソン氏 (編集部注:テッド・ネルソン氏の講演内容はこちらをお読みください「未来を紡ぐ原点を探る:情報化社会の開拓者、テッド・ネルソンが語るハイパーテキストとインターネットの可能性」、「ネット社会の生みの親の一人、テッド・ネルソンが語る現在・過去・未来」) そんなネルソン氏の功績とその意義について、元アスキー社長の西和彦氏と、元「ASAHIパソコン」副編集長の服部桂氏がそれぞれの立場から語りました。 パソコン黎明期に日本のIT文化を牽引した西氏は、技術者としてネルソン氏のビジョンがどのように革新をもたらしたのかを振り返りました。 一方で、服部氏はメディアの視点から、彼の思想が情報社会やデジタル民主主義に与えた影響を論じたのです。 それぞれの語りには、日本のIT業界の成長を見つめてきた人たちだからこそ語れる洞察があふれています。 今回は、個別に語られた西氏と服部氏の言葉を通じて、テッド・ネルソン氏が描いた未来の可能性がどのように現代のAI社会や情報文化に息づいているのかを考察します。 ネルソン氏のビジョンに触れ、それをどのように次世代に生かすべきかを考える一助となるでしょう。
■ 元アスキー社長の西和彦氏 西和彦と申します。 本日はテッド・ネルソン氏の業績を称える会に、お招きいただきありがとうございました。 実は、私がここに呼ばれたのには、少し触れにくい理由があります。 それは、かつて私がテッド・ネルソンの生活費を支援していた時期があったからです。 テッドのような天才は、お金を稼ぐことには全く関心がなく、生活は周囲の人々に支えられていました。 彼らのような天才は、まさに「カネの切れ目が縁の切れ目」で生きているようなものです。 そんなテッドを見出し、彼の才能を世に送り出したのが、慶應義塾大学の村井純さんでした。 型破りな性格や行動、独特の人間関係ゆえに、米国の大学はテッドに博士号を与えようとはしません。 しかし、村井さんは彼の才能を見抜き、慶應大学で博士号を取得できるよう尽力し、教授として迎え入れたのです。 私は、教員たるもの原石を見出し、磨き上げるべきだと考えています。 村井さんはまさにそれを実践したのです。 テッドというダイヤモンドの原石を見つけ、彼自身の手で輝かせるよう導いた。これは日本だけでなく、世界レベルで称賛されるべき偉業だと思います。