米大統領選挙でマイノリティからの支持獲得に課題を残すハリス陣営
非白人人口比率が高まる米国
米国では人口に占める白人の比率が低下する一方、ヒスパニック(中南米系)とアジア系の比率が顕著に高まる傾向が続いている。 米商務省国勢調査局が10年に一度実施している国勢調査によると、2010年から2020年までの10年間に、史上初めて白人人口が減少する一方、この間、ヒスパニックや混血、アジア系などが全体の人口増の大半を占めたことが分かった。白人の比率は57.8%となお過半数は超えているが、白人の人口はこの10年間で8.6%減少し、総人口における比率は過去最低を記録した。 また米国勢調査局は、2043年に白人の人口が過半数を割りこみ、2060年までに総人口に占める非白人の比率が57%まで拡大するとの予測を発表している。 こうした人口構成の変化は、多様性をより重視する民主党に有利に働くように思える。しかし実際には、こうした変化が進むもとでも、民主党と共和党の勢力が拮抗した状況は続き、米国の分断は解消されていない。 例えば、人口に占めるヒスパニックの比率が39.4%(2020年)のカリフォルニア州では民主党が圧倒的に強いが、同じくヒスパニックの比率が39.3%と高いテキサス州は共和党の牙城である。人口構成だけで党勢が決まる訳ではない。
ハリス氏のマイノリティの支持回復は十分でない
バイデン政権下では、黒人、ヒスパニック、若者の支持が共和党に流れてしまった。物価高など中低所得層に特に大きな打撃となる経済環境の悪化の影響や、中東でのイスラエル支援などが背景にあるだろう。 7月下旬と8月のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の調査によると、7月にバイデン氏が大統領選挙戦から撤退し、ハリス副大統領が後任の民主党大統領候補になって以降、黒人有権者の支持率は13ポイント回復している。しかしそれでもこの数字はバイデン氏が2020年に獲得した水準をなお10ポイントも下回る。またハリス氏はヒスパニックの支持率も13ポイント改善させたが、バイデン氏の2020年の水準をまだ6ポイント下回っている。 ハリス氏は30歳未満の若い有権者の支持率を7ポイント改善させたが、2020年のバイデン氏の支持率に届いていない。 ハリス氏がこうした各層で支持率を十分に回復できていないのは、女性よりも男性についてである。自らが女性であることや、人工中絶の権利を主張するなど女性の権利向上に積極的な姿勢は、各層で女性からの支持を得ている。しかし、男性からの支持は十分に高くはない。