“元加害者”「自覚がなかった」…深刻化するカスハラに企業等も対策 背景に『客は神様』の顧客第一主義
講師を務める愛知県内に住む会社員の鈴木さん(仮名・50代)は、かつてカスハラの「加害者」だった。 講師の鈴木さん(仮名): 「 『ウチのほうが先に頼んだのに、何でこーへんねん!』とか、店員さん呼んで 『早く持ってこい!』『どういうことなん!』と」
鈴木さんは主に飲食店で、店員に高圧的な言動や、横柄な態度をとるなどの行為を繰り返していたという。自身のカスハラに気づいたきっかけは、娘からの一言だった。 鈴木さん: 「子供から『一緒に食事行きたくない』とか、最初はやっぱり受け入れにくかったですね。自分は別にそうは思っていないので」 カスハラの「自覚がなかった」という鈴木さんだが、娘の一言をきっかけに、5年前からカウンセリングに通い始めた。 鈴木さんの心理検査の結果をみると、カスハラをする人の心理状態を見て取ることができる。カスハラをしていた5年前、鈴木さんは「自分が正しいと思うことを他人に従わせようとする心のはたらき」が高い数値となっていた。
「自分を抑えて他人に合わせようとする心のはたらき」は0点だった。
鈴木さん: 「自分の主張だけが優先しているというか、 『俺は客だぞ』という感覚が強かった気がする。それによって自分の中での気持ちがすっきりするというのが強かった。やっぱりそこにリスペクトがなかったと思うんです、店員さんとかそういったところに。でもやっぱり“お互いさま”じゃないですか、そこが崩れていた」 やはり“客は神様”という考え方が根底にあり、「相手の立場の尊重」と「お互いさまの心」が足りなかったという。鈴木さんは、カスハラへの対処について講演活動などをしながら、今もカウンセリングに通っている。
■深刻化する“カスハラ”…企業や自治体も対策に本腰
サービス業の現場ではカスハラへの対策が進んでいる。大手コンビニ「ファミリーマート」では2024年10月から、具体的な行為を例に挙げたポスターを掲示して、注意喚起している。
東京都でも2024年10月、全国で初めてカスハラを禁止する条例が可決され、三重県の名張市役所でも、職員が胸ぐらをつかまれたり、長時間に及ぶ恫喝を受けるなどのカスハラ被害があったことから、2024年9月に対策を打ち出した。 ・名札の表記をひらがなの名字のみに ・トラブルが起きたらICレコーダーで録音 ・注意を呼び掛けるポスターの掲示 ・窓口に防犯カメラの設置を検討