いまや“神格化”された歴代「スカイラインGT-R」

　アメリカには、“25年ルール”と呼ばれる中古車輸入規制緩和措置が存在します。新車製造時から25年が経過した中古車の輸入に関する規制が、一気に緩和されるんです。 【画像】「えっ！…」これが「海外に流出」してしまいそうな日本の名車たちです（10枚）

2024年1月から“25年ルール”の適合が始まった“R34”型「スカイラインGT-R」。日本国内でも高値で取引されている

　一部では「右ハンドル車の輸入規制も緩和される」とささやかれているようですが、実はアメリカには右ハンドル車を規制する法律が存在しないため、これは完全に“都市伝説”です。そのため実際は、新車製造時から25年未満の車種でも、アメリカに輸入することはできるのです。ただし、厳しい衝突安全基準と排出ガス規制をクリアできれば、という話ですが……。 　25年ルールのポイントは、圧倒的にアメリカへ輸入しやすくなる、という点に尽きます。そのため、新車時登録から25年が経過した中古車が、日本からバンバン輸出されています。日本の中古車の状態のよさ、中古車相場の安さ（少なくとも今までは）、そして、日本国内専用モデルの特殊性など、理由はさまざまあるでしょう。 　この25年ルールで特に注目されているのは、日本から国内専用モデルがアメリカへ輸出されていること。最も顕著な例が、日産「スカイラインGT-R」です。例外的に海外へと正規輸出されたことはありますが、少なくともアメリカで「スカイラインGT-R」が新車販売されたことはありません。 　そんな折、ゲーム『グランツーリスモ』が世界デビュー。映画『ワイルドスピード』の影響もあって、日本のスポーツカーブームが到来します。これにより、歴代「スカイラインGT-R」が神格化され、“日本でしか買えない”という制約が一部のクルマ好きからのニーズを余計に喚起したといえるでしょう。 　また、かつては一部のクラシックカーにのみ流れ込んでいたオルタナティブな投資資金が、日本のネオクラシック・スポーツカーも対象になった、という事実もあります。 　クラシック・フェラーリはいつの時代も相対的に高値で取引されていましたが、やがてその資金が空冷ポルシェへと流れ込み、ぐいぐいと中古車相場が上昇しました。次にオルタナティブ投資資金が流れた先はネオクラシックカーで、昨今では国産スポーツカーも立派な投資対象になっています。 　その結果、正規輸出されたこともあるスバル「インプレッサWRX」やマツダ「RX-7」、トヨタ「スープラ」といった、1990年代後半に排ガス規制で息絶えた国産スポーツカーへの需要も相当なものとなっています。なかには、新車時価格をはるかに上回る価格で取引される車両もあり、“値上がり率”だけで見たら同年代のフェラーリやポルシェなどよりも高額取引されているといえます。 ●スポーツカー以外も“値上がり銘柄”になる？ 　個人的には、3ローター・ロータリーエンジンを搭載したマツダの「ユーノス コスモ」も、高額取引対象のポジションを勝ち取るだろうと注目しています。 　市販車として世界初、かつ世界で唯一の3ローター・ロータリーエンジン搭載車であり、「あれほど過激かつ暴力的なクルマをよく自動車メーカーの商品として世に出せたな」と思わせる、バブル期の勢いが節々からにじみ出ています。 「ユーノス コスモ」が超高額で取引されたという話はまだ耳にしませんが、つい先日、走行1万km台の俗にいう“バリモン”が、オーストラリアで4万8000豪ドル（約496万円）にて落札されたことがありました。ほぼ新車時価格で取引された事実は、注目に値します。 　というのも、一般的にネオクラシックカー市場は、スポーツカーだけが値上がりする傾向にあるからです。そんな市場において、高級GTカーであってスポーツカーではない「ユーノス コスモ」がこれほどの高値で取引されたのは、今後の相場暴騰の前触れであるような気がしてなりません。 　同じく、まだ高額取引されていないものの、ひそかに海外の“エンスー”の間でブームになっており、日本からしばしば輸出されているモデルが存在します。世界的にレアな存在となった、V型12気筒エンジンを搭載するトヨタの旧型「センチュリー」などがそれに当たります。 　しかし、国内専用モデルがもてはやされるのも、“R34”型「スカイラインGT-R」が最後になるかもしれません。後継モデルである“R35”型「GT-R」は正規輸出されるなど、日本のスポーツカーも2000年代以降、生き残りのため海外マーケットに活路を見いだしてきたからです。 　ネオクラシックカー市場における値上がり銘柄はスポーツカーに限る、というこれまでの常識が変わらない限り、25年ルールで日本からアメリカへ輸入される中古車は減ることになりそうです。 　そして今後は、ミニマリズムの流行と環境への意識の高まりとが相まって、これまで以上に軽自動車への注目度が高まるかもしれません。世界のクルマ好きが今後、どんな国内専用モデルに注目するのか、ちょっと見ものですね。