大企業社長・父から「巨万の富」を“生前贈与”されるも「約1,300億円」の贈与税が“ゼロ”となったワケ【日本の法改正に影響した<平成の出来事>】
平成の時代、生前贈与された財産にかかる「約1,300億円」に及ぶ贈与税が、「支払い義務なし」と裁判で認められる事件が起こりました。本記事では<株式会社T&T FPコンサルティング>の髙島一夫氏・髙島宏修氏、<株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所>の西村善朗氏・森田貴子氏らによる共著『富裕層なら知っておきたいスイス・プライベートバンクを活用した資産保全』(総合法令出版)から一部抜粋し、相続税の歴史について解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング
国外財産にも相続税がかかる場合がある
相続税の場合、死亡した被相続人だけでなく相続人の居住状況なども納税義務の判定に影響します(図表6―2)。 相続税の納税義務には複数のパターンがありますが、とくに重要なのが「無制限納税義務者」と「制限納税義務者」のどちらに該当するかという点です。 「無制限納税義務者」とは? 「無制限納税義務者」には「居住無制限納税義務者」と「非居住無制限納税義務者」があります。居住無制限納税義務者は「相続または遺贈によって財産を取得し、その財産を取得したときに日本に住所を有する個人」、非居住無制限納税義務者は「相続または遺贈によって財産を取得し、その財産を取得したときに日本に住所を有しない個人」と規定されています。 「制限納税義務者」とは? 「無制限納税義務者」との違い 「制限納税義務者」とは、相続または遺贈によって日本国内にある財産を取得し、その財産を取得したときに日本に住所がない個人をいいます。 無制限納税義務者の場合、国内財産と国外財産のどちらも相続税の課税財産になります。 一方、制限納税義務者であれば、国内財産のみが課税対象となり、国外財産は相続税の課税財産になりません。 ここで、「海外に移住して財産も国外に移せば、日本の相続税を払わなくていい」と思われるかもしれませんが、これを実現するのはかなり困難と考えられます。というのも、このような税逃れを封じる税制改正がすでに行われているからです。 たとえば、相続開始時点で被相続人と相続人のどちらか一方でも国内に住所を持っていたら、その時点で無制限納税義務者になります。また、たとえ相続を見越して海外に住所を移したとしても、被相続人と相続人のどちらかが相続開始前10年以内に日本国内の住所を持っていたら、やはり無制限納税義務者と判定されます。 以前、相続税の規定はここまで厳しいものではありませんでした。平成12年(2000年)度の税制改正前は、日本国内に住所を有していなければ、たとえ日本国籍であっても制限納税義務者と判定され、国外財産は相続税などの課税対象にはなっていなかったのです。 以来、相続税などの納税義務者の判定については改正が重ねられて現在に至るわけですが、こうした改正は、海外移住やキャピタル・フライトによる、つまり、国外財産を制限納税義務者に贈与または相続して、日本の相続税・贈与税を逃れるという、税逃れに対する財務省の危機意識があったと考えられます。
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