一晩で20万人超が一斉サイクリング、「道一帯が自転車でふさがる」…中国政府は抗議行動再燃を警戒し外出規制も
【上海=田村美穂、北京=川瀬大介】中国政府による「ゼロコロナ」政策に若者らが各地で白い紙を掲げて抗議した「白紙運動」から11月下旬で2年となる。中国では経済低迷で都市部の若者の失業率が高止まりする中、当局は若者への締め付けを強化し、抗議行動の再燃に対する警戒感をあらわにしている。 【一覧】中国が「海外警察」の拠点を置く国々
河南省鄭州の大学生らは今月8日、約50キロ・メートル離れた開封に向かう深夜サイクリングを実施した。深夜サイクリングは地元の大学生らの間で流行していた。
流行は鄭州の女子学生4人が6月、開封の名物料理を食べに向かう様子をSNSに投稿したことがきっかけだった。当初は官製メディアも「地元の観光業が活性化した」と肯定的に報じていたが、若者が大挙したことで状況は一変した。
米政府系のラジオ自由アジア(RFA)によると、8日夜は20万人超の大学生らが一斉に開封に向かった。主要道路では大渋滞が発生した。深夜サイクリングは、借りた場所とは異なる場所で返却できるシェア自転車を使うのが特徴で、開封のタクシー運転手(48)は9日朝には「鄭州につながる道一帯が乗り捨てられた自転車でふさがっていた」と振り返った。
シェア自転車の大手3社は9日、鄭州での規制措置を発表した。危機感を強めた当局による働きかけを受けた対応とみられる。地元住民によれば、鄭州市内の大学は学生の外出禁止措置に踏み込んだ。市中心部の飲食店街は23日夜、週末にもかかわらず学生らしき若者の姿はほぼなかった。
サイクリングに同級生と参加した女子大学生は「政治的に敏感な話になるとは思いもしなかった」と本紙の取材に打ち明けた。SNSに投稿した8日夜の写真は削除した。サイクリングへの参加が大学で問題視されるのではないかと不安を抱いているという。
若者が自発的に集まる動きを当局が素早く封じ込めたのは「いったん抗議行動に発展すれば容易に止められなくなる」(北京の外交筋)という教訓を白紙運動で得たことが背景にある。