【伊佐須美神社再建】会津文化を次世代に(12月27日)
会津美里町の伊佐須美神社は社殿の再建に向け、会津松平家十四代当主松平保久氏を会長とする奉賛会を発足させた。2008(平成20)年10月の火災による社殿焼失から16年がたつ。県内外に賛同の輪を広げてほしい。 岩代国一之宮・会津総鎮守として信仰を集める伊佐須美神社は室町時代以降、本殿と幣殿、拝殿の主要3殿に、神饌[しんせん]所と神楽殿を左右に配置する社殿様式を守ってきた。しかし、不審火による火災で、これらの様式を全て焼失した。神社によると、現在は臨時の仮社殿で祭祀[さいし]を行っているが、設備が不十分で、祭典や行事のほとんどを縮小または省略、休止せざるを得ない状況が続いているという。連綿と受け継がれてきた会津文化を次世代に継承する上で、再建は急務と言える。 会津観光推進の観点からも意義は大きい。2023(令和5)年の県の観光客入り込み状況によると、伊佐須美神社は110万人で、下郷町の大内宿の85万人、会津若松市の鶴ケ城天守閣の50万人を上回る。社殿が再建されれば、インバウンド(訪日客)を含む観光客のさらなる増加が見込まれ、周辺地域への波及効果も期待される。
奉賛会の事業目標では、本殿と幣殿、拝殿の主要3殿を先行して再建し、2030年の完成を目指す。その後、神饌所と神楽殿を整備する。注目したいのが、室町時代に本殿に使われていたとされる「黄金扉」と「古代扉」の復活だ。両扉とも片側だけが宝物殿に収蔵されている。再建に合わせ、もう片側を復元し配置する。実現すれば、社殿に歴史的な魅力が加わることになる。総事業費は8億円で、3億円を神社が負担する。残りの5億円は寄付で賄う計画だけに、県内外からの幅広い支援が欠かせない。 伊佐須美神社は、日本最古の歴史書「古事記」に由来する古神社で、「相津(会津)」の地名発祥の伝承社でもある。所蔵する「朱漆金銅装神輿[しんよ]」は、室町時代に葦名盛安・盛常父子が奉納したもので、国指定重要文化財になっている。まずは、こうした歴史と再建の意義を広く知ってもらう必要がある。特に地元の若い世代には、アニメや漫画など分かりやすい形で伝え、郷土への愛着と誇りを育む契機にしたい。(紺野正人)