話が合わない上司の理不尽な言動…心が折れる前にすべき五つの対処法
イマイチな上司に対処するための5か条
〈1〉三人称で受け止める 相手が上司だと思うと、「部下として」上司の意見や考えにすべて合わせないといけないような感覚になります。上司が高圧的な場合は、言いたいことも言えず、議論を深めることもできません。 そこで、「上司であることをカッコに入れて議論する」。つまり、上司ではなく、ただの他人(三人称)と考えることで、「この人はこういう考えなんだなぁ」くらいで受け流します。「サム」や「メアリー」といった全く関係ない三人称のあだ名をつけて、自分と相手を客観視することが効果的です。すると、まるで映画やドラマを見ているように、「この登場人物は何か怒っている感じだな」と思え、自分が責められている感覚が薄れていきます。 〈2〉言葉使いを変える それぞれ育ってきた時代や環境が異なるため、同じ言葉でもその意味や受け取り方は、人によって違います。高圧的と感じる言動があった場合、相手が話の内容よりも「表現」に反応している場合も少なくありません。 私は、幼少期から暮らす地域の影響でアメリカ人と話す機会が多く、「あなたはどう思うのか」という質問に「ストレートな表現」で返すことが当たり前でした。ところが日本の組織では、アメリカ人との対話で求められたこの表現方法を「生意気だ」「気に食わない」と受け取る人が多いことに気づきました。そこで、一歩立ち止まり、「この言葉に過剰に反応するようだから、別の例えを用いてみよう」「もう少し柔らかい言い回しにしてみよう」と言葉使いを変えることを試みたところ、それだけで相手に違った対応が見られるようになったのです。 〈3〉一致できるところまで引き下がる そもそも、前提となる方針や価値観の相違で、提案や意見を受け入れてもらえないこともあります。特に女性の登用や昇進を巡っては、「なぜ女性だけを支援するのか」「管理職に女性が少ないのは、女性のやる気の問題だ」「私も女性だけど耐えてきたんだから問題ない」などの考え方が、働きやすい環境の整備を阻んでしまいます。 そんな時は、いきなり全て先に進めようとするのではなく、上司がまず「どこで引っ掛かっているのか」を明確にするために、議論や考え方を一つずつ「一致できる」ところまで引き下がるのです。「ここまでは合意できる」ということが明確になれば、その後はさらに、データやファクトを積み重ねるチャレンジをしていきます。そうすれば、何となく「感覚的に拒否反応」を示していた内容に合意してもらえるチャンスが見えてきます。 〈4〉外部の人に言ってもらう 話を先に進めるために、「自分で言う」か、それとも「誰かに言ってもらう」かは大事なポイントです。私の経験では、20代の頃は特に「若い女性」という見られ方が、ハードルになっている場合が多くありました。若い女性の話には耳を貸さない上司もいます。でも、同じ内容の提案を、例えば外部の識者がすれば、「それは素晴らしいですね。ぜひ取り入れましょう」なんて、すんなりと話が進むこともあります。 その上司にとっては、「中身」よりも「誰に言われるか」が一番大事なのです。上に立つ人ほど権威に弱いというケースは少なくありません。世の中そんなものかとがっかりもしますが、何もかも自分でやろうとしなくていい、ということでもあります。 〈5〉「もともと、そう思っていた」にも笑顔を返す 新しいプロジェクトをあんなに批判していた上司が、社内外からプロジェクトが評価を受け始めると、「もともと俺もそうだと思っていたんだ」と手のひらを返すことがあります。内心「えー!!!」と驚愕するわけですが、そんなことはもはや気にせず、笑顔で「そうでしたよね。いつもありがとうございます」と言いましょう。そうすると、次に何か困ったことがあったときに味方になってくれます。 まったく異なる価値観を持った大勢の他者と仕事をしていくに当たって、何もかもがうまくいくなんてことは、きっとないでしょう。でも、誰かに幸せを届け、社会に必要な仕事をしていくためには、決して心を揺さぶられることなく、自分の考えや意思を失わないことが大切です。自分のメンタルを守りながら組織で生き抜く方法を、私は経産省時代に教わり、今でも糧になっています。皆さんがもし上司に恵まれなかったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。(起業家 小林味愛)