【ラグビー】フランスで評価を高める日本代表のテビタ・タタフ[ボルドー]。TOP14準決勝に挑む。
ボルドーが、満員のホームスタジアム、スタッド・シャバン・デルマスでラシン92を下し(31-17)、4年連続の準決勝進出を決めた。 太腿肉離れのため離脱を余儀なくされたSOマチュー・ジャリベールの不在が懸念されたが、キャプテンを務めるSHマキシム・リュキュが、FWを指揮し、出てきたボールをテンポよく捌き、チームのプレーを操縦した。また、前半プレッシャーに耐えられず密集でペナルティーを繰り返すラシン92を、PGで罰し、キックで16点を叩き出した。 しかし、この試合の勝敗を決めたのはFWだ。特にラック戦でボルドーのFWが圧倒的な強さを見せた。その中でも現地メディアに絶賛されているのが、NO8テビタ・タタフだ。 「超パワフルで常にチームを前に進める」、「1v1にも強い」、「ボールキャリアとしても常に前進するが、タックルでも敵に食い込み、必ず前に出る」、「重心が低くラックでもボールを奪いにいく」、「パワー、スピード、プレーの賢さを兼ね備えた選手」などなど、タタフへの賛辞が並べられる。 さらに、「このタイプの選手は怪我が多いが、彼は滅多に怪我をしない!」と力説する。確かにこれは重要なポイントだ。 この試合でのタタフの活躍を数字で表すと、10回のボールキャリーは、FBロマン・ビュロスと並んでボルドーでトップ。突破したディフェンスの数は6で、こちらはこの日ラシン92のディフェンスを掻き回したWTBマドッシュ・タンブエと並んで1位。ラインブレイク1は、タンブエの2に続いて2位。そして走った距離は35m。35mと聞いただけではそんなに多くないように思えるが、タンブエの63mに続いて多い。 昨年10月29日にトゥールーズ戦でデビューした時からタタフの活躍は注目されていた。しかし、「初めて経験する長いフランスのシーズンで、どこまでパフォーマンスを維持できるだろうか?」、「2022年7月の日本対フランスでも強烈なプレーを見せていたが、あの頃は身体がこんなに絞れていなかった。今の体重を維持できるのだろうか?」とも言われていた。 今季、タタフはトップ14で21試合、チャンピオンズカップで4試合に出場し、計1605分プレーした。そのうち11試合は80分プレーしている。この頻度でプレーしながら毎試合安定したパフォーマンスで彼のレベルを証明した。 また体重を維持するためのトレーニングメニューも与えられていると『レキップ』は伝える。ボルドーのパフォーマンス・ディレクターは、昨年のワールドカップまでフランス代表選手のコンディションを整えていたチボー・ジルーだ。彼のトレーニングは、時にはハード過ぎるのではと指摘されることもあるほど厳しい。そのハードメニューをタタフもこなしているからフィットネスが保てているのだろう。 ボルドーと聞けば、リュキュ、ジャリベール、WTBダミアン・プノー、WTBルイ・ビエル=ビアレ、CTBヨラム・モエファナ、CTBニコラ・ドゥポルテールとフランス代表選手がずらりと並ぶBKの華のあるアタックを想像しがちだが、今年のボルドーの躍進を支えたのは、よりハードに戦えるようになったFWなのだ。 準決勝の対戦相手は、強固なセットピースが強みのスタッド・フランセだが、ボルドーはPRベン・タメイフナが肩を負傷し準決勝出場が難しいと見られている。ジャリベールの欠場に続いて、タメイフナの欠場は非常に痛い。 さらにスタッド・フランセは守るラグビーのチーム。サラセンズ、そしてエディー・ジョーンズ時代初期のイングランド代表の鉄壁のディフェンスを築いたポール・ガスタード仕込みの難攻不落のディフェンスで、相手にトライを許さない。 ボルドーはカウンターからスピードのあるアタックでトライをとるのが得意だが、リスクを取らず手堅いラグビーをするスタッド・フランセからボールを得る機会は多くは得られない。ラックでどれだけターンオーバーできるかも鍵になり、激しいFW戦が予想される。 しかも、スタッド・フランセは2位でレギュラーシーズンを終え、準々決勝を戦うことなく準決勝に駒を進め、心身ともにフレッシュな状態だ。 しかし、今年の準決勝はボルドーのスタッド・マトムット・アトランティック。ボルドーの選手には、地元のサポーターの声援が後押ししてくれるホームアドバンテージがある。 ボルドーは今季も1試合あたり平均約28000人の観客を動員して、トップ14最多観客動員数を記録している。そのサポーターの前で決勝への切符を勝ち取ることができるだろうか。 (文:福本美由紀)