早い列に入れるって…それが少子化対策といえるのか 「こどもファスト・トラック」に感じる政府のズレっぷり 豊田真由子「余計な社会の分断招く」
制度や環境が意識を変えるという面もある
「制度や環境を整えることで、理解と機運が醸成される・意識を変えていく」という面もあると思います。欧州での「優先レーン」のような仕組みが、当たり前に社会に普及してくると、「ハンディのある人には、サポートをするのが当然」という意識が浸透し、小さい頃から自然に身に付き、自分もそうしよう、という人生全般における行動にも反映されていっているように見受けられました。 また、ハード面が十分でなくても、それをソフト面がカバーするということもあります。例えば、パリの地下鉄の駅(歴史的に古く、エレベーターがないことが多い)や、バスの乗降の際は、必ず、周囲の方が何人も寄って来て、ベビーカーを運んでくれました。子ども連れや高齢者や障がいのある方に対して配慮をする、ということが、社会全体で極めて自然に行われている印象を受けました。 ――――――――――――――――――――――――― 誰もがかつては子どもであり、誰もがいつかは年を取ります。かつて通ってきた道、これから通る道、です。そして、「配慮される側」にも周囲への気遣いや感謝が大切だと思います。 寛容は寛容を生み、不寛容は不寛容を生みます。 ―分断ではなく、相互の配慮と社会の理解に変えていくー そうした観点からも、政府の方針には、もう少し、民意の正確な理解と精緻な検討とをしてほしいと思います。 ◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。
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