早い列に入れるって…それが少子化対策といえるのか 「こどもファスト・トラック」に感じる政府のズレっぷり 豊田真由子「余計な社会の分断招く」
人々や社会の意識や理解が、非常に重要
法律や制度があっても、人々の意識が伴わなければ、実質的な意義は大きく損なわれます。例えば、少し前までの「育休制度はあるけど、取れる雰囲気じゃない」といったことが典型です。 例えば、私が霞が関勤務の若手だった頃は、「育休を取るなんてとんでもない」という雰囲気で、異動先の部局で「保育園に子どもを迎えに行くために早退する職員の方」を初めて見た時には、率直にびっくりしました(そういう時代だったんです…)。 その頃に比べたら、時代は大きく変わり、育休も時短勤務も利用されているようですが、一方で、今も日本では、「職場に子育て中の人がいると、周囲に迷惑がかかる」といった、いわゆる『子持ち様論争』が話題になっています。 これについては、負担の不平等が生じている状況では不満が出るのは当然だとも思いますので、仕事をカバーした方に対して手当を支給する、といった何らからの対応策が求められると思います。また、産休・育休期間だけではなく、子どもが一定の年齢になるまでは、発熱した等の理由で早退や欠席をしなければならない時期がかなり続くことを考えれば、問題はもっと長期的であることにも気付きます。近くに手伝ってくれる親族がいない場合(私もそうでした)には、職場の人に迷惑をかけることはできないし、そもそも休むなんてできない、と必死で、病児保育を利用するなど、本当に「毎日が綱渡り」になります。 一方で、ジュネーブ赴任時代、他国の政府代表部には女性が多く、外交官として仕事をしながら出産している人も多かった(一方、当時の日本政府代表部では、基本的にはダメ)ので、「どうやったらそれが可能になるのか」聞いたところ、「上の世代にとっては『自分がやってきたこと』、下の世代にとっては『これから自分がやること』だと思っているから、当然に協力し合う」、「普段から、属人的ではなく、チームで仕事をしているので、カバーし合える」と言われ、「なるほどなあ」と思いました。 そこにあるのは、法律や制度を超えた、「実際に行われてきた歴史と、そこから生まれる納得感や理解、そして、仕事の仕組みの工夫」でした。