『GEMNIBUS vol.1』栢木琢也プロデューサー 東宝が新人クリエイターを育成する意義とは【Director’s Interview Vol.418】
YouTube/TikTok から映画の世界へ
Q:個人で映像を作れて発表できる時代に、映画会社が人材育成をする意義はどこにあると思いますか。 栢木:この時代だからこそ、YouTubeやTikTokなどで新しい才能を見つけやすくなりました。見つけやすくなったからこそ、育成する意義がある。先ほどの話にもつながりますが、そのクリエイターとプロデューサーの絆作りを早い段階から始める意味もあります。 Q:これまでTikTokで活躍されていた方も今回の監督に入っていますが、そういった方も映画を撮りたいという希望を持たれていたのでしょうか。 栢木:まさに『フレイル』の本木真武太監督などは、映画を撮ることが夢だったようです。YouTubeやTikTokが発展している今の時代でも、映画というものに夢をもっていただけている。それはとても嬉しいことですね。だからこそ、こういう機会を作ることが大事だなと。 Q:本木監督が作られた『フレイル』には、いろいろな映画のオマージュが見られました。TikTokなど新しいことをやっている方は、映画には興味がないのかなと勝手に思っていましたが、決してそうではないんですね。 栢木:私が所属する開発チームでは「TikTok TOHO Film Festival」というものをやっていますが、応募してくださる方は、映画業界に行きたい人が多い。本木監督もその中から出てきた方です。今は多くの人が触れる映像がTikTokなので、そこで映像を作ってはいるけれど、いずれは映画監督になりたい。そんな思いを強く持たれていました。 Q:プロデューサーとして監督たちと接してみていかがでしたか。 栢木:皆さん熱量がすごかったですね。こういった場があったからこそ、チャンスと捉えて全力を尽くしてくれました。興味深かったのは、普段は個人で制作することが多いためか、集団での制作に慣れていない方が多く、そこの難しさに直面していたこと。「一人でカメラを回していたときの方がうまくいっていたのに…」と悩みつつも、多くのスタッフがいるからこそ出来ることも実感していた。皆さん、ぶつかりながらも勉強されていたように思います。 Q:そういった監督たちに対して、プロデューサーの皆さんがアドバイスをされていたのでしょうか。 栢木:プロデューサーも若手なので、プロデューサーが強い意見を言うのではなく、一緒に学びながら新しいものを目指していくような形でした。 Q:栢木さん自身も現場で学ばれながら進めた部分があったのでしょうか。 栢木:そうですね。GEMSTONE立ち上げ時は、経営企画部の新規事業担当だったので、映画製作の現場経験はありませんでした。いくつかの短編映画をプロデュースした経験はありましたので、本木監督と共に試行錯誤しながら作品を形にしていきました。 Q:では社内の先輩プロデューサーなどに相談された部分もあったのでしょうか。 栢木:はい。映画企画部や、TOHO animationのプロデューサーに意見を聞いたのはもちろん、今いるチームは配信向け実写シリーズ企画をプロデュースしている部署でもあるので、そういったところからも意見を集約してすすめました。 Q:実際にプロデュース業務をやってみていかがでしたか。 栢木:『ゴジラVSメガロ』は白組さんが中心になって進めているので、それほど難しさは無かったのですが、『フレイル』の方はアメリカにベースがあるVirgin Earthさんという映画制作の経験がほぼ無いプロダクションだったので、一つ一つ一緒に確認しながらやっていきました。 今回は海外スタッフも多く、スタッフのほとんどが英語を話していたため、言語の壁もありました。例えば、ホースで水を撒くシーンがあったのですが、脚本に「ホース」と書いてあったものが英語で「馬」と訳されていた(笑)。海外のカメラマンから「馬を出す予算があるのか?」と言われてしまったこともありました。そういった細かいすれ違いもあったので、一つ一つ丁寧にビジュアルのすり合わせを行いました。 また、海外との混合チームだからこそ、ハリウッドでの主流な制作体制をテスト的に導入するといったチャレンジを、抵抗なく受け入れてもらえました。そこは大きかったです。
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