『GEMNIBUS vol.1』栢木琢也プロデューサー 東宝が新人クリエイターを育成する意義とは【Director’s Interview Vol.418】
商業映画として導くこと
Q:企画は全て監督からの提案でしょうか。それとも、方向性などはプロデューサーからリクエストした部分もあったのでしょうか。 栢木:そこはディスカッションの中で作り上げていきました。『フレイル』に関しては僕から「ゾンビものはどうですか」と話をしたところ、監督も「やりたかったんです!」となった。ただし、普通のゾンビものをやるのではなく、新しいアプローチで社会的テーマを内包したものにしたかったので、そこは皆で議論しました。「フレイル」という題材自体は監督が出してくれたものです。各作品、皆でディスカッションしながら辿り着いた題材になっています。 Q:『フレイル』はゾンビ映画でしたが、今回の4本はカテゴリーについて分け方を意識されたのでしょうか。 栢木:まったく意識していないですね。どのクリエイターとやるかを一番大事にしていたので、そのクリエイターの魅力がいちばん発揮できるジャンルということで、結果的にこうなっています。 Q:4作品それぞれ尺もバラバラですが、その辺は特にルールは設けなかったのでしょうか。 栢木:今回に関しては尺についての規制は特に設けませんでした。第2弾に向けて、そこはまさに議論しているところです。 Q:制作に際して、監督に具体的なリクエストは出しましたか。 栢木:脚本段階から撮影に至るまで、いろんなパートで出しています。やはり東宝が作る短編なので、商業映画に繋がる道筋を作らなければならない。監督が自由に作る芸術作品にならないように、各プロデューサーから観客視点の調整が入っています。 Q:監督の芸術性やクリエイティブを観客が観るものに導いていくことが、プロデューサーの仕事ということでしょうか。 栢木:まさにそうだと思います。特に東宝のプロデューサーにはそれが重要だと考えています。今回の目的は、ゆくゆくは東宝の商業映画の本線に繋げることなので、観客の視点が抜けている短編を作っても意味がない。プロデューサーとして、そこをしっかり握ることは意識していました。 Q:商業映画として監督にどこまで自由度を与えて引っ張っていくのか、その辺のバランスはいかがでしたか。 栢木:これは難しいですね。本当に各プロデューサーすごく悩んでいると思います。今回は東宝の作品作りからすると、企画や尺など含めて“自由度”は高めだったとは思います。ただし商業性という部分では、最低限担保できるものにはしないといけない。そこのバランスが本当に難しかったですね。 Q:監督と議論になった局面はありましたか。 栢木:今回はどのクリエイターにも商業性の部分に共感してもらった上でこのプロジェクトに参加してもらっています。商業映画の監督になりたい人でないと、このプロジェクトには興味が無いと思うんです。脚本作りの細部で議論になったことはありますが、商業的なことに関して、表現との兼ね合いで議論になることは無かったですね。 Q:編集段階ではいかがでしたか。 栢木:やっぱり、監督には思い入れがある分どうしても長くなってしまうんです。観客の視点ではスッキリしていて無駄がないほうが観やすいので、そこの議論はありました。
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