“恒星間天体の落下による振動” の正体はトラック? 破片採集の主張に厳しい反論
■小球とCNEOS 2014-01-08は関連していない可能性が高い
地震計のデータがCNEOS 2014-01-08と無関係であるとすると、落下場所も全く違う場所になるはずです。Loeb氏らは地震波のデータに加え、秘密裡の大気内核実験が行われていないかどうかを監視する低周波音センサーのデータも用いて落下場所を推定しました。 しかし、Fernando氏らが独自に同じデータを分析したところ、推定される落下地点はLoeb氏らが推定した場所から160km以上も離れた別の場所でした。これはガリレオ・プロジェクトの調査領域とは大幅にズレています。 今回の研究には小球の分析結果を報告したDesch氏らも参加しており、小球が恒星間天体に由来する可能性は低いと考えています。仮に、Loeb氏らが採集した小球が本当に恒星間天体に由来するものであったとしても、それはCNEOS 2014-01-08とは別の天体となるでしょう。これらのことから、Fernando氏らは結論として「良く言えば非常に誇張された結果であり、悪く言えば完全に誤りであると考えている」と厳しいコメントを残しています。 今回のFernando氏らの研究成果は今のところ論文としてはまとまっておらず、その内容は2024年3月に開催された国際会議「第55回月惑星科学会議」で発表されました。この研究の発表は、Loeb氏らによる小球の分析結果の直後に割り当てられています。この発表順が意図的なのか偶然なのかは不明ですが、研究は発表すれば終わりなのではなく、その後いつでも正しいかどうかが検証されるという、研究の世界の科学的な姿勢をある意味では体現しているのかもしれません。 Source “Interstellar signal linked to aliens was actually just a truck”. (Johns Hopkins University) A. Loeb, et al. “Spherules Recovered from the Pacific Ocean Site of the CNEOS 2014-01-08 (IM1) Bolide”. (Lunar and Planetary Institute) Benjamin Fernando, et al. “Probably Not Aliens ― Seismic Data Analysis from the 2014 'Interstellar Meteor'” (Lunar and Planetary Institute) Amir Siraj & Abraham Loeb. “Localizing the First Interstellar Meteor with Seismometer Data”. (Signals) Abraham Loeb, et al. “Discovery of Spherules of Likely Extrasolar Composition in the Pacific Ocean Site of the CNEOS 2014-01-08 (IM1) Bolide”. (arXiv) Steve Desch & Alan Jackson. “Critique of arXiv submission 2308.15623, "Discovery of Spherules of Likely Extrasolar Composition in the Pacific Ocean Site of the CNEOS 2014-01-08 (IM1) Bolide", by A. Loeb et al”. (arXiv) Peter G. Brown & Jiří Borovička. “On the Proposed Interstellar Origin of the USG 20140108 Fireball”. (arXiv)
彩恵りり