「雪がなくなったら、全員負け。」 政治や社会を動かして「冬」を守りたい アウトドアコミュニティが連帯して訴えたこと
環境団体のProtect Our Winters Japan(POW JAPAN)が10月8日、アウトドア関連企業や自治体など110団体(10月4日時点)とともに作成した、エネルギー・気候政策に対する共同提言を発表しました。 【写真】冬季五輪メダリストも登壇 これほど多くのアウトドアコミュニティが連帯して立ち上がった背景には、近年、日本のスキーリゾートが見舞われている深刻な雪不足があります。登壇したスキー場経営者やアスリートらの言葉からは、切迫した危機感が伝わってきました。(ライター・編集者/小泉耕平)
新聞の全面広告で訴えた「強い危機感」
「雪がなくなったら、全員負け。」 共同提言のメディア向け説明会があった10月8日、こんな刺激的なキャッチコピーが踊る全面広告が信濃毎日新聞と北海道新聞に掲載されました。 この広告も、今回のアクションの一環としてPOW JAPANが出稿したもの。2019年設立のPOW JAPANは、長野県大町市を拠点にスノーコミュニティ発で気候変動から冬を守る活動に取り組む環境団体です。 今回、パタゴニアやバートンなどのアウトドアブランドや、国内各地のスキー場、地方自治体、冬季スポーツのアスリートなどとともに、気候変動対策を政策や社会に働きかける様々なアクション「VOICE from the OUTDOOR COMMUNITY」を実施しています。 アウトドアコミュニティが国内では前例のない行動を起こした背景には、近年の急速な気候の変化に対する危機感の高まりがあるといいます。説明会では、POW JAPANの高田翔太郎事務局長がこう語りました。 「コロナ禍後のインバウンド需要で来場者数を増やしているところもありますが、スキー場全体としては雪不足で苦しんでいます。倒産件数は昨年が過去10年で最多だったということですし、特に西日本などの標高の低いスキー場ではゲレンデの一部をクローズしたり、営業日数を縮小したりするところが増える傾向にあります」 POW JAPANがまとめた資料からは、雪不足による国内スキーリゾートの苦境が伝わってきます。今年、近畿地方ではスキー場が通常の雪量の2割しか確保できず、「赤字確定」を訴えるリゾートも。兵庫県などでは営業日数が昨年比で半分に減少したスキー場もあるといいます。 関東甲信越でも、今年の積雪はスノーリゾート地として名高い長野県白馬村で平年比の20%、新潟県湯沢町で同24%(2024年2月15日時点)。雪不足が原因で一部のスキー場は休業し、客数が半減した場所もありました。北海道のスノーリゾートでは積雪量こそ平年並みながら、積雪のピークは40年ぶりの遅さとなり、将来的には年最深積雪が44%減少するという予想も出ているといいます。