「雪がなくなったら、全員負け。」 政治や社会を動かして「冬」を守りたい アウトドアコミュニティが連帯して訴えたこと
「50年に1度」の雪不足が近年は頻発
雪不足は今年だけの突発的な問題ではありません。説明会に登壇したスキー場経営者やアスリート、自治体町長など9人は、近年の環境の変化について口々に警鐘を鳴らしました。 群馬県片品村でかたしな高原スキー場を運営する大都開発代表取締役の澤生道氏は、「当スキー場が全面滑走可能だった日数のデータを毎年とっているんですが、9年前の2015-16年シーズンから雪不足が常態化しています」と語ります。 2015-16年シーズンといえば、「スーパーエルニーニョ」と呼ばれる大規模なエルニーニョ現象の影響による暖冬で、日本各地のスキー場が雪不足に見舞われた年。当時は「50年に1度の雪不足」と受け止められていましたが、それから10年も立たないうちに同規模の雪不足がすでに2回(2019-20年、2023-24年)起きたといいます。 慢性的な雪不足の中で生き残るため、かたしな高原スキー場はスキーに代わるスノーシュー体験や、冬以外のグリーンシーズンのアトラクションを充実させるなどの対策をとってきました。10年前には売上の約5%だったグリーンシーズンの売上が、今年は約20%にまで上昇するなど、スキー場のビジネスモデル自体も変化しつつあります。 「環境変化への適応はどんな業界でも必要だと思っていますが、近年の気温上昇のスピードは加速度的で、これはもう通常の変化ではないと感じています。近い将来、ついていけずに振り落とされてしまう地方企業、地方自治体が出てくるのではないかという危機感を覚えています」(澤氏) プロスキーヤーでソチ冬季五輪ハーフパイプ銅メダリストの小野塚彩那氏は、スキー場のように整備されていないバックカントリーを滑走する際の変化をこう語りました。 「バックカントリーのフィールドに入れる時期がこれまで遅くなってきていますし、1月や2月にも雨が降るようになって、氷になった層の上に雪が降ってしまうことで雪崩が起きやすい状況になっています。 アスリートとしては挑戦をし続けたい思いがあるので、バックカントリーに行って自分の技術やポテンシャルを高めたいのですが、一つの判断が命に直結するような危険な場面が増えてしまっていると感じています」