「雪がなくなったら、全員負け。」 政治や社会を動かして「冬」を守りたい アウトドアコミュニティが連帯して訴えたこと
影響を受けている人々の声を政策に反映させて
こうした状況にもかかわらず、日本では政策論争のテーマに気候変動対策がほとんど上がっていません。POW JAPANの母体であるPOWはアメリカからスタートして現在、カナダやヨーロッパ諸国など13カ国にネットワークがありますが、海外と比べても日本では気候変動問題への世論の関心の低さが目立つといいます。 登壇したバートンジャパン代表の竹鼻圭一氏は、こう訴えました。 「気候変動の問題は、先日の自民党の総裁選でも、立憲民主党の代表選でも、ほとんど議題にすら上りませんでした。こんな国はほかにはないと思います。今は政策のリーダーシップが本当に必要です。化石燃料を燃やすことではなく、再生可能エネルギーへの大胆な転換を今すぐにする必要があります」 政治や社会を動かして気候変動から冬の環境を守るため、今回、POW JAPANなどが中心になってアウトドアコミュニティによる共同提言「1.5℃目標の実現を目指して」がまとめられました。企業や団体、自治体など110団体、アスリートや個人など318人がこの提言に賛同しています(10月4日時点)。 現在、国のエネルギー政策の指針となる「第7次エネルギー基本計画」の議論が進んでいて、2024年度中に策定される見通し。2025年にはパリ協定の締約国が5年ごとに提出・更新する温室効果ガスの削減目標である「国が決定する貢献(NDC)」も決定されます。 今回の提言では、これから決定されるエネルギー基本計画やNDCを、パリ協定で定められた1.5度目標に整合する内容にすることを求めています。それに加えて、こうした気候・エネルギー政策の「決め方」についても変えていく必要があると、POW JAPANの高田事務局長は語りました。 「エネルギー政策を議論する審議会や研究会のメンバーの多くが偏っていて、エネルギーをつくる側や、大量に消費する産業の方々の意見が色濃く反映される決め方になっています。気候変動の影響を現に受けているような人々や産業の声をしっかり聞いて、エネルギー政策に反映させていくことを求めています」 提言は説明会があった10月8日午後、自民党の「ウインタースポーツ&リゾーツ議員連盟」の幹部議員に手渡されました。超党派の「『山の日』議員連盟」にも後日手渡される予定になっています。日本の政治は冬山からの「悲鳴」にどう応えるのか。今後の対応が注目されます。
朝日新聞社