「やる気がないならやめなさい」の”うそ”──娘の習い事、山田ルイ53世の試行錯誤 #令和の親
まるで弁慶、娘のアドリブに舌を巻く
言い訳がましくなるが、いきなり「やめなさい」とまくし立てているわけではない。「おやつ食べたら、ドリルやるんだよ!」「机の整理整頓が済んだら、テレビ見ていいよ!」と試行錯誤し、段階は踏んでいる。とはいえ、そういった約束事は反故(ほご)にされることもしばしば。 いつぞやなどは、「(学校の宿題の)日記書いたのー?」と妻に疑惑の目を向けられた長女が、「バッチリだよー!」とゲームを中断し、「今日は、休み時間に○○ちゃんと遊んで……」と堂々と朗読を始める、なんてことがあった。 娘の後ろから、何の気なしに筆者がのぞき込むと……ノートは真っ白。「勧進帳」でお馴染み、弁慶さながらのアドリブ力と胆力に、(なるほど、バッチリだ……)と舌を巻いた、もとい、背筋が凍ったものである。 こんな調子では、正直、親のほうも疲弊してしまう……。 あわよくばねぎらいの言葉でもという筆者の魂胆も、「たとえば、『勉強終わったらゲームしていいよ!』っていう、『AしたらBしていい』式の約束って、親が子を制御しようと都合よく設定しただけ。子どもにしてみれば、すんなりゲームができたほうがいい。選ばせているようで、結局、問答無用なんです」と鳥羽先生はすべてお見通し。
その後も、「子どもにとって、家は生活の場のすべて。逃げようがない相手をコントロールしようとするうそは感心しない。もし言うなら、本当にお子さんがやめてもいいと、親も覚悟を持つべきでしょうね」、「習い事も子どもにとっては大切な現実です。それが親に与えられたもので、抵抗したり、嫌がったりしていたとしても、何とかその世界で生きていこうとしています。それを突然『宿題やらないなら、もうやめなさい』と言ってしまうと、子どもは自分の世界の一部が壊れるような気持ちになってしまうのではないでしょうか」と赤子のよだれを優しく拭うように諭され、ぐうの音も出ない。 言われてみれば確かに。自ら世界を創っておいて壊すとは、さながら「ノアの箱舟」だ。 もちろん当方、神ではないし、慎ましいわが家はペット禁止である。 ここまで防戦一方の筆者だったが、「それがエスカレートしていくと、親の言葉に『○○しないならあなたを愛さない』というニュアンスが出てきてしまい、子どもはとても不安を感じるようになる」とのお話でようやく、(おー!間違ってなかった……)と一息つけた。