薪の炎と食材が織りなす絶妙なハーモニー! 新進気鋭のシェフが作る独創的な料理の世界に迫る
本田:常に何かをインプットしたい。 鍬本:はい。絶対大事なことだと思っています。 本田:行ったら、研修もさせてもらうの?
鍬本:いや、食べ歩きです。トイレと間違ったふりをしてキッチンを覗いてみたり。ニューヨークではキッチンを見せてくれないレストランもあるんですけど、知らぬ顔でキッチンに入っていって、何しているんだって聞かれたら、日本で店をしていてと言って。そうしたら仕込みを見せてくれました。鴨がすごくおいしかったので、どういう育て方しているんですかって聞いたら、次の日、何時に来なよって。 本田:それは勉強になるよね。 鍬本:修業経験がほぼないので、そういう経験を積んでいくしかないんです。リアルにキッチンを見せてもらって、その経験を日本に持ち帰って、お客様に食べていただくという。それだけですね。
本田:ストックホルムやパリのレストランに行って、インスパイアされた料理ってある?
鍬本:ストックホルムの「Ekstedt(エクステド)」に行ってきました。薪だけでやっていて、そこも振り切り方が尋常じゃないお店です。フランバゴ、牛脂をかける料理はそこでインスパイアを受けたものです。 本田:メニューは頻繁に変えているの? 鍬本:そんなにしょっちゅうは変えていないです。短くて2週間ぐらいで、長くて1カ月ぐらい。全体ではなく一部ずつ変えていっています。 本田:これだけのスタイルだとクリエーションが大変だよね。 鍬本:でも、本当に楽しいです。 本田:だから海外に行って、クリエイティブなアイデアを得てくる。 鍬本:ストックホルムの「Frantzén(フランツェン)」なんか2、3時間ぐらい涙目で食べていました。すごすぎて。 本田:「Frantzén」のシェフは和のインフルエンスを受けているよね。 鍬本:食べていて、なんで日本人なのにこういうことを思い付かなかったんだろうと悔しい気持ちにもなりました。北欧だったので、発酵のことも気になって、シェフに尋ねたら「なんで日本なのに発酵させるんだ。僕らは冬になったら食材が取れないからそういうふうにしてるんだよ」っていうのを聞いて、なるほどなと。北欧では夏に木の実を集めて、それを発酵して使うというのが元々の生活の知恵としてあるんですよね。そういうことが文字で書いてあるものを読んでも頭に入ってこない。直接、生の声で聞くとすごく勉強になります。