想像以上に面白い!EVのF1とも呼ばれる「フォーミュラE」は近い将来の量産EVを見据えた戦いでもあるのかもしれない
近い将来の量産EVと関係が深い「レース・トゥ・ロード」
もうひとつ、フォーミュラEが興味深いのは、近い将来の量産EVと関連づけている自動車メーカーが少なくないことです。代表的なのがジャガーです。フォーミュラEにおいて今シーズン、チームの獲得ポイント最多のジャガーTCSレーシングのプリンシバル(責任者)のジェイムズ・バークリー氏は、ジャガーの新世代EVの開発にもかかわっています。 「フォーミュラEのマシンのインバーターに採用したWolfspeedのシリコンカーバイド半導体がいい例です」と、バークリー氏は、レースの合間のインタビューで答えてくれました。電力の損失を抑えられるため航続距離が伸びるなど、このあとジャガー(とランドローバーとレンジローバー)の量産車にも搭載していく予定だそうです。 ジャガーはこのようなレースと量産車の関係が深いことを「レース・トゥ・ロード」あるいは「ロード・トゥ・レース」と表現します。「世界最高かつ最も競争力のある白熱したレースを展開しながら、電気自動車のテクノロジーの限界を継続的に引き上げたいという熱い思いを持っています」とは。前出のバークリー氏の言葉です。 2025年に発表が予定されているジャガーの新EVは、「いままで見たこともないような斬新なスタイルで、狙う市場もいままでよりずっと上」と、ジャガー・トランスフォーメーション・ディレクターのサミュエル・ゴールドスミス氏は言います。 今回のフォーミュラEで、マセラティをどうしても抜き去ることが出来なかった日産。理由として、効率とエネルギー密度がいまひとつ追いつけなかった、と言われています。これを上げていくことが、日産のEVの性能アップにもつながっていくはず。 フォーミュラEマシンにおいて、いまは統一規格が義務づけられている駆動用バッテリーも同様。自由化されたら、さらに量産車の性能向上に寄与するかもしれません。こんなふうに未来のEVとの関係を探ってみるのも、フォーミュラEのおもしろさでしょう。
<文/小川フミオ>