4対1のトレードに「無茶苦茶びっくり」 3冠王との談義で10→30HR、“復活”した中日大砲
唸ったベンチでの“予言”「けっこう当たるんだよね」
「ドラゴンズに来てからの落合さんはそんな無茶苦茶に練習をするようなことはなかったけど、キャンプではこういうふうに過ごして最終的にはこうなるとか、きちんと計算されているんだよ。オープン戦なんかも最初はボールを見る、ひとつもバットを振らない。あれって凄く冷静なことで、打つと思ってボールを見逃すのと、最初から打たないでボールを見逃すのはまるっきり違うんでね。いい勉強になったよ」。すべてが新鮮に見えたようだ。 「落合さんは『このピッチャーは勝つよ』とか『このピッチャーは勝てないよ』とか、ベンチに帰ってきて、ひと言。そんなことも言うんだよ。それがまたけっこう当たるんだよね」と宇野氏は唸る。落合と言えば、試合前のフリー打撃でのスローボール打ちが有名だったが「あれもね、自分のポイント、バッティングポイントの確認だよね。そうすれば打てるみたいな、だから遅いボールを打つ。ホント、すべてにきちっとしている人なんだよ」と話した。 宇野氏はプロ10年目の1986年に10本塁打に終わった。1984年に37発で本塁打王、1985年はNPB遊撃手シーズン最高本塁打となる41発を放っていたが一気に急降下した。しかし、星野体制となり落合が加入した1987年は、4月に打率.333、8本塁打、17打点の成績で月間MVPを受賞するなど、好スタートを切った。5月27日の阪神戦(甲子園)では「4番・落合、5番・宇野」の2打席連続アベックホームランも飛び出した。 「(2回に)ホームラン、ホームラン。(4回にも)ホームラン、ホームラン。それは覚えているよ。落合さんはその試合(の9回に)もう1発打ったけどね」。この年の宇野氏はオールスターゲームに初出場。ファン投票で選出された。「その時も落合さんと一緒。あの人はオールスターでも後半戦をにらんで動いていた。第1戦はこう、第2戦はこうとか計画性があったんだよね」と、ここでもオレ流に刺激を受けた。 知る人ぞ知る名コンビでもあった“オレ流&ウーヤン”。1987年の宇野氏は最終的に28本塁打の落合をも上回る30本塁打をマークし、完全復活を果たした。これには自身の努力とともに、3冠男との出会いが大きかったのも間違いない。
山口真司 / Shinji Yamaguchi