「南海トラフ巨大地震」高感度観測へ…海洋機構、高知・日向灘沖に「長期孔内システム」設置
海洋研究開発機構は南海トラフ巨大地震に向けた観測のため、想定震源域の高知沖で2026年度、日向灘沖で29年度に長期孔内観測システム(LTBMS)の設置を計画する。29年度中に防災科学技術研究所の南海トラフ海底地震津波観測網(N―net)と接続し、リアルタイム観測を予定する。断層がきわめてゆっくり動くスロー地震の発生状況を高感度に捉えられるようになる。南海トラフ地震臨時情報の効果的な発出に役立てられる。巨大地震発生様式の解明も期待される。 地球深部探査船「ちきゅう」を用い、高知沖と日向灘のそれぞれ1カ所で水深2000―3000メートルの海底掘削孔内に設置する。光ファイバー歪計や孔内間隙(かんげき)水圧計を配備し、スロースリップや低周波微動などのスロー地震、微小地震から巨大地震までシームレスに観測できる。 スロー地震は巨大地震に影響を及ぼすとされるが、地震動が微弱で以前は観測が難しかった。東京大学地震研究所の小原一成教授は「スロー地震監視はプレート境界の固着状態のモニタリングに活用できると考えられる」としており、LTBMSによる高感度の連続観測が期待される。 海洋機構はこれまでに熊野灘、紀伊水道沖で同様のシステムを設置し、地震・津波観測監視システム(DONET)と接続。高感度かつリアルタイムに評価できたことで、南海トラフ沖合でスロースリップが繰り返し発生していることが初めて明らかになった。 一方、こうした現象は現行の海底地殻変動観測などでは観測が難しく、震源域沖合のプレート境界におけるスロースリップなどの発生状況はほとんどの地域で分かっていない。LTBMSにより、「その地域が通常どのような形で歪みを貯めているか明確となり、通常と異なる動きがあれば臨時情報発出の根拠とできる」(海洋機構の荒木英一郎上席研究員)。