テスラは米西海岸現地時間の10月10日、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外にあるワーナー ブラザーズ スタジオで自社イベント「We, Robot」を開催した。 【写真】「ロボタクシー」のほか、二足歩行型ロボット「テスラ ボット」なども公開した 　事前に、アメリカでは「自動運転に関する新しい発表がある」という情報が流れており、世界から注目が集まった。筆者はテスラが公開した生中継映像を見たが、イベントの山場となった開始から約30分時点で視聴者数は330万人に達した。 　イベントは、続々と登場する新しいモビリティについて、イーロン・マスクCEOがコメントしていく形で進行した。一般的な企業のプレゼンテーションではなく、テスラユーザーなども招いたパーティーという建て付けだった。 　（桃田 健史:自動車ジャーナリスト） 　今回、大きく4つの領域が紹介された。 　最初は、「ロボタクシー」だ。 　ロボタクシーとは、運転の主体がクルマで、乗員が運転することを想定していない自動運転レベル4で運用される商用車を指す場合が多い。 　テスラのロボタクシーの特徴は、そのボディ形状にある。 　ボディ寸法の詳細は非公開だが、大人4人が乗車できる中型クーペで、ドアは跳ね上げ式だ。 　一般的なロボタクシーのイメージでは、4ドアセダンやミニバンを連想するが、あえてこうしたクーペ形状を選んだところが非常に興味深い。 　ここには、新たなサービスの可能性を感じるが、その点については後述する。 　2つ目の「ロボバン」は、20人程度が乗車できる公共交通用モビリティだ。空港施設内での移動や、市街地での移動を想定しているという。 　3つ目は、「モデル3」「モデルY」など乗用モデルにおける、アイズオフ機能を備えた自動運転の標準装備だ。

■　EVの成功を自動運転や人型ロボットでも再現できるか？　 　アイズオフとは、運転の主体はクルマのシステムにあり、気象状況などによって自動運転の継続が難しい場合はドライバーに運転を代わることを前提とした、自動運転レベル3に相当するものと考えられる。 　 　そして4つ目は、二足歩行型ロボット「テスラ ボット」だ。 　イメージ動画では、家族の一員のように家庭に設置され、さまざまな作業を代行したりサポートすることを想定している。 　自動運転や二足歩行型ロボットの分野を定常的に取材してきた筆者としては、今回の発表内容に対して特に驚きはなかった。 　こうした気持ちは、自動車産業界やIT業界、そして投資家にとっても同じだったのではないだろうか。 　これらの技術はすでに世界各国の一部で社会実装されていたり、または長年にわたり実証実験されていたりするからだ。 　ただし、自動運転も二足歩行型ロボットも、収益性の高いサービスモデルとして成立している段階ではない。 　それでも、テスラの製品やサービスがトリガーとなり本格普及につながっていく可能性を、誰も否定できないだろう。　 　なぜならば、2010年代前半にテスラが「モデルS」を皮切りにEVの大量生産計画を公表した際、「EV普及は時期尚早だ」としてメディアを含めて多くの人がテスラの将来に懐疑的だった。あれから10年ほどでテスラは世界を代表するモビリティカンパニーに成長してしまったからだ。 　筆者はテスラの2003年創業時から定常的にアメリカを中心に世界各国でテスラの事業を見てきている。その過程はまさに紆余曲折があったことを十分に理解しているつもりだ。 　そのうえで言えるのは、今回の「We, Robot」が、技術とマーケティングを上手く連動させた次世代事業発表の場であり、少なくともグローバルの自動車産業界に対する強いメッセージになったということだ。