ただの“素”のモデルじゃないの?新型フリードにAIRが用意される理由はN-BOXにも通じている?
ホンダのミニバンといえばコンパクトモデルの「フリード」が大黒柱で、軽自動車N-BOXと合わせて大きなスライドドア車は売れ行きがイマイチというイメージが強い。そんな中で、新型フリードにはステップワゴンと同じ「AIR」グレードが設定さて、統一したブランディングを進める姿勢が明確になった。はたして、そこに勝算はあるのか? そしてAIR推しの狙いとは? そのカギを担うカラーは「フィヨルドミスト・パール」だった。 【写真を見る】新型フリードでは標準タイプは「AIR」と呼ばれる。※本文中に画像が表示されない場合はこちらをクリック PHOTO&REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya)
新型フリードは「AIR」と「CROSSTAR」2つの顔で展開
3代目へとフルモデルチェンジした新型フリードのスタイリングは、上質や洗練そして信頼感を目指したものとなっている。その上でシンプルな「AIR」とアクティブな「CROSSTAR」という2つのラインを設定しているのが特徴。これは幅広いユーザーニーズを満たすことを狙った商品企画と理解することができる。 「CROSSTAR」というのは売れに売れまくった従来型フリードから踏襲したサブネームで、SUVブームとの相性を考えても新型フリードに設定することは自然に思えるが、プレーンな仕様に「AIR」とつけたのには疑問の声もある。なぜなら、「AIR」というサブネームはステップワゴンで先行して使っているが、そのステップワゴンは好調な売れ行きというイメージが強くないからだ。 しかし、そうした理解は間違いというべきかもしれない。
ステップワゴンは最下位脱出、プレーンな魅力が拡大中
前提としてステップワゴンの売れ行きについてのファクトを確認してみよう。 自販連(日本自動車販売協会連合会)が発表している2024年上半期(1月~6月)の登録車販売台数から、ミニバンモデルの販売台数と前年比の上位7モデルをピックアップすると以下のようになる。 トヨタ・シエンタ 5万5649台(82.6%) 日産セレナ 4万169台(116.6%) ホンダ・フリード 3万8429台(88.3%) トヨタ・アルファード 3万7385台(152.2%) トヨタ・ノア 3万5105台(69.5%) ●ホンダ・ステップワゴン 3万4932台(218.7%) トヨタ・ヴォクシー 3万4794台(71.5%) ステップワゴンが属するMクラスミニバン・カテゴリーにおいて、同モデルは最下位が定位置という印象があるかもしれないが、僅差とはいえヴォクシーを上回っている。さらに注目したいのは前年比で、ミニバン全体の中でみても明らかに伸びているのがわかる。 現行ステップワゴンでは、AIRとSPADAという2つのラインを展開しているが、いずれもライバルに対して押し出しが弱いのがウィークポイントと指摘されてきた。しかし、ホンダ自身が押し出し感のあるスタイリングからの脱却を狙っている。シンプルライフを求めるミレニアル世代やZ世代に向けたスタイリングがステップワゴンに与えられたといっていい。新型フリードにAIRというサブネームが使われているのは、そうしたミレニアル世代やZ世代を意識したデザインとしていることを示している。 ステップワゴンが前年比で倍以上に売れているということは、まさにAIRの世界観がマーケットに受け入れられてきたことを意味しているのではないだろうか。新型フリードにAIRを設定したことの相乗効果により、シンプルライフにマッチするスタイリングという評価が高まるようになれば、ステップワゴンとフリードがカニバリすることなく同時に売れていく未来が見える。 実際、新型フリードの商談に訪れたユーザーがステップワゴンを検討するというケースも増えているという。