医学用語で“伝染性紅斑” 警報レベルの大流行「リンゴ病」とはどんな病気か 子どもや妊婦、免疫力が低下している人は要注意
■妊婦や免疫力が低い方は要注意 さて、先に過剰な心配をしなくていいと述べましたが、妊娠さんは注意が必要です。というのも、ヒトパルボウイルスB19は、胎盤を通じて胎児に感染することがあるからです。 特に妊娠20週までに感染すると胎児水腫や貧血、流産のリスクが高まる可能性があり、その発生率は5~10%程度と見積もられています。一方、その後の週数ではリスクは低くなります。 胎児水腫とは、赤血球の産生が抑制されることで胎児に重度の貧血が生じ、体内に異常な液体がたまる状態を指します。胎児の命に関わる可能性があるため、早期の診断と適切な管理が重要になります。
妊婦さんが、何らかの理由でヒトパルボウイルスB19を浴びた疑いがある場合、医療機関ではまず血液検査を実施して、感染の有無を確認します。 この検査では、ウイルスに対してできる特異的な抗体を測定することで、感染の有無を判断します。ただし、やや特殊な検査になるので、結果がわかるまで通常は数日以上の時間を要します。 感染が確認された場合、胎児の健康をモニタリングするため、超音波検査を定期的に行います。 超音波検査では、胎児水腫の兆候や羊水量の異常をチェックします。必要に応じて専門医が関わって、貧血で減った血液を補うために胎児に直接輸血を行う胎児輸血などを検討する場合があります。これにより、胎児の生存率を高めることが可能です。
子どものときにすでにリンゴ病にかかって免疫力を持っていれば、妊娠中にウイルスを浴びても心配ないと考えられますが、妊娠中の感染症は妊婦さんにとって大きな心理的ストレスとなります。 感染が疑われる場合でも、過度な不安を抱かないよう、適切な情報提供と医療機関でのサポートを受けることが大切です。また、家族や周囲の人々が妊婦さんを支える環境を整えてあげてほしいと思います。 ■感染予防で行いたいこと リンゴ病にはワクチンや抗ウイルス薬といった薬を用いた予防法や治療法はありません。抗菌薬については、むやみに使うとかえって耐性菌などの問題が出て、害になる可能性もあります。したがって、一般的な感染予防を徹底することが推奨されています。