偉大な妹へのエール(社会人バスケ・ミツウロコ 山本加奈子)
ミツウロコは今年3月に開催された社会人チャンピオンシップで決勝まで勝ち進みながら、最後は秋田銀行に敗れ、あと一歩のところで優勝を逃している。Wリーグの企業チームと異なり、社会人リーグの企業チームは一般企業と同じようにフルタイムで仕事をした後にチーム練習をするケースが大半。山本によれば、ミツウロコも8時半から午後5時半までしっかり仕事をするということだ。そういった環境では自分の時間を確保することも難しいが、「たぶん、みんなバスケが大好きなんだと思います、結局は」という山本も、ただ勝ちたい一心でバスケットに打ち込む日々を送る。 「社会人でまだ日本一を獲れてないので、まずそこを目指して。全国で決勝までいって負けちゃったりするので、もうあとはそこを獲るだけ。あとちょっとのところを獲りきりたいですね。とにかく現役のうちは日本一を獲りたい。今は会社で働いてるので、その後のことは全然考えてなくて、今一生懸命やりたいっていう感じです」 向上心を持ち続けるからこそ、Wリーグのチームと対戦することに大きな意味がある。そして、社会人リーグとは異なる環境で試合をすることも貴重な経験だ。東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで開催された今回のサマーキャンプは初日に2611人、2日目には3359人もの観客が集まった。そんな中でもバスケットを純粋に楽しむことができるのは、山本の選手としての強みと言えよう。 「こういう所で試合できるのはありがたいです。大勢の前でプレーするというのはやっぱり雰囲気が違いますね。緊張するとかはなく、ただ楽しいです」 最後に、山本を語る上で決して欠かすことのできないトピックにも触れておきたい。名門中の名門・桜花学園高からトヨタ自動車に進み、3年前は3×3の代表としてオリンピックを経験した妹・麻衣が、今度は5人制で間もなくオリンピックのコートに立つ。小・中・高・Wリーグの全てで日本一を経験し、WリーグではプレーオフMVPも受賞した、言ってみれば国内トップクラスのエリートである妹の存在もこの上ないモチベーションになるはずだが、山本自身は「向こうが上すぎて(笑)」とどこか恐縮したように語る。それでもやはり山本にとっては自慢の妹であり、大切な家族。世界一まで到達してしまうかもしれない妹に、心からエールを贈る。 「私も負けないように頑張ろうとは思いますけど、姉の私から見てもやっぱりすごいなと思いますね。楽しんでプレーして、結果がついてくれば最高ですね。メダルは持って帰ってきてほしいですけど、『まずは楽しんで』って言ってます」 妹と同じように、山本もコート上で勝利を追求する立場。妹の背中を追いかけるという表現は適切ではないかもしれないが、あと一歩のところまできている社会人日本一を実現し、妹に胸を張れる日まで、山本は高みを目指し続ける。
吉川哲彦