ディーノ以来の大進化! 360 モデナ/スパイダー/チャレンジ・ストラダーレ(1) 想像以上に優しいフェラーリ
鼓膜が破れる勢いで反響したV8サウンド
何より記憶へ刻まれたのは、フラットプレーン・クランクが組まれたV型8気筒エンジンが放つ雄叫びだった。イタリアの高速道路、アウトストラーダのトンネルへ入り、8000rpmを超えると、鼓膜が破れる勢いで反響した。 【写真】V8サウンドを全身で浴びる 360 モデナ/スパイダー/チャレンジ・ストラダーレ 現行のV8フェラーリも (143枚) ポルシェ911 GT3やノーブルM12、ケータハムR500などと縦走していたから、一層のボリュームといえたが、フェラーリ360 チャレンジ・ストラダーレのサウンドは、人間の許容値を超えていた。それでも、病みつきになる体験でもあった。 それは2003年の話し。筆者は同僚とともに、AUTOCARのパフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤーを決めるため、ミラノ郊外にあるピレリ社のテストコースを拠点に比較試乗をしていた。最高に刺激的な数日間になった。 360 チャレンジ・ストラダーレは、まだ発売されたばかり。スーパーカーの最高峰に躍り出たことは明らかだった。フェラーリに求めるすべてが備わっていた。 騒音に対する規制が緩かった時代に、94dBが110km/hで計測された。音量だけでいえば、R500の方が1dB大きかった。全身の毛を逆立てるような音響は、今でも忘れることができない。 その360 チャレンジ・ストラダーレのベースとなった360 モデナは、1999年に登場。既に完成度は高かった。それから四半世紀が過ぎ、最もコストパフォーマンスに長けたクラシック・フェラーリになっていることへ、読者はお気づきだろうか。
ミドシップ・フェラーリ誕生以来、最大の進化
数10年前に、ディーノ206 GTでミドシップ・フェラーリの歴史が始まって以来、最大といえる進化を遂げていた。ボディだけでなく、シャシーとサスペンション、エンジンなど、主要コンポーネントの殆どはアルミニウム製だった。 ボディサイズは先代のF355から10%ほど拡大し、キャビンのゆとりは増えていた。それでいて、車重は22kg増の1447kgに留まった。 新世紀を迎えるフェラーリとして、360 モデナには高い期待が掛かっていた。より速く、より使いやすくを求めて、新技術が積極的に導入された。 スタイリングを手掛けたのは、ピニンファリーナ社。リトラクタブル・ヘッドライトは廃止され、ボディへ埋め込まれた光源はカバーで覆われた。流麗にカーブを描く、空力性能を重視したフォルムが描き出された。 最大の特長は、V8エンジンの全体像を外から眺められる、巨大なガラス製リッド。ボディサイドの上下には、エンジン冷却用のインテークが開いたが、控えめなサイズでスムーズな面構成に調和していた。 フロントグリルは、中央の大きな楕円形ではなく、ナンバープレートの両脇へ二分。左右のラジエーターへ、大量の空気を導いた。一段持ち上げられた中央からは、リアのディフューザーへ気流を誘導。ダウンフォースはF355の4倍に達した。 ホイールベースは、F355から150mm延長。2+2のフェラーリ456と同等だった。キャビンはボディのフロント側へシフトし、その頃、最もスタイリッシュなスーパーカーだったといっていい。