トランスジェンダーの“吹き替え”どうする?…報道局員が考える「多様性」の伝え方
■「女性ホルモン」の字幕はピンク色で良いのか
◯国際部・鈴木しおり: そうですね。例えば「女性ホルモン」「男性ホルモン」などの字幕の色も、ピンクとかブルーとかは、今回はあまりにもステレオタイプな色だから使うのをやめようと。それで、じゃあニュートラルな色ってなんだろうねと。結局オレンジや緑で対応したんですけれども、まだこういう議論が進んでない中で、そういう色すらも私たちのステレオタイプが反映されている可能性がある。逆に、例えば当事者の人はピンクを使ってほしいとか水色を使ってほしいとかいう希望もあるかもしれないじゃないですか。なので、やっぱり一度、色の問題については当事者の方の意見を聞きたいなと思いました。
◯国際部デスク・近野宏明: 今回とても心強かったのは、鈴木さんたち若い記者が自発的にそこにちゃんと気がついて、「こういう風にしたいと思うんですけど、どうですか」って言ってきてくれて、これはなんというか、記者を長くやってりゃいいっていうものでもないんだなって(苦笑)。若い皆さんの感性の方が、自然にそれを提案してくるっていうことが、とてもいいというか。 ◯国際部・鈴木しおり: これは別のニュースの話なんですけれども、先日、日本に住む同性カップルの取材をしたんですね。で、お2人が顔出し不可だったので、顔にモザイクをかけることになったんですけれども、じゃあモザイクの色どうしよう?って。これは私が取材をして、国際部のまた別の記者が編集してくれたんですが、それこそピンクとか水色にするのはいやだし、どうしようねって話をしていた時に、その子が「じゃあ服の色に合わせてモザイクをかけるね」と言ってくれて、こういう方法もあるんだ!って思いました。
◯news every.プロデューサー・片田やよい: 今、まだ報道局としては統一基準みたいなものが無いじゃないですか。逆に言えば男性は青で女性は赤みたいなステレオタイプの色合いも、もうやめようって決めたわけでもない。でもそのステレオタイピングな伝え方に違和感を持たれる時代になっているのは確かだから、すごく一つ一つの判断が難しくなっていると思うんですけれど。そういう中で、いま鈴木さんが言ったように、比較的若い子たちの中ではもう、対応するのが普通になっていますよね。 例えばevery.でも先週、容疑者が男で被害者が女性っていう事件のVTRを作ったんですよ。で、その事件の状況を説明するためのCGを作った時に、このニュースを担当したディレクターたちは、男の容疑者の動きに一番注目してほしいから赤色の人型。被害者の女性はグレーの人型で作ったんですね。こういう風にちゃんと自分たちで考えて、自分たちなりのロジックを持って放送することが、今求められているんじゃないかなと思うし、ケースバイケースになってしまうかもしれませんが、なにか画一的な基準を作るよりも実は健全なのかなっていう気もしています。