トランスジェンダーの“吹き替え”どうする?…報道局員が考える「多様性」の伝え方
◯ファシリテーター・白川大介: LGBTQ+だけではなく色々な取材対象者がいますけれども、特に神経を使わなければいけないポイントっていうのが違うと思うんです。例えばステップファミリー(再婚などによる、血縁のない人を含む家族形態)の話だったら、子どもが親をどのように呼んでいるかとかね。それがトランスジェンダーの人に関して言うと、「声」っていうのが特に気にすべきポイントで、その人たちにとってのデリケートなところなんだっていうことが今回分かった。これが今回の私たちの学びなのかなというふうに思います。
■5秒で読める「一行16文字」との戦い
◯NY支局長・末岡寛雄: 私も昔、番組側にいたから、every.からの指摘は痛いほどわかるんですよね。それでも今回、伝えるための努力こそ原点というか、番組側はそこまで気を使っているということに改めて気付かされました。 それから、番組側から「じゃあ絶対分かりやすい字幕を出してくれよ」って言われたときにも、読みやすいとされる一行16文字で収まる日本語訳を出せているのか、5秒で読めるのか、みたいなところを、普段からもっと気を付けていかなきゃいけないなと、改めて考えるきっかけを頂いたと思っています。 ◯ファシリテーター・白川大介: 実際、その字幕はVTRの編集にあたった鈴木さんが考えたと思いますが、どうだった? ◯国際部・鈴木しおり: 一行16文字を意識すると、「だ・である調」にする方が短くできるんですけれども、なんか偉そうに見えちゃうっていうのがいやだなと思って。編集にあたったもうひとりの記者と話しながら「です・ます調」にしようと決めて、すごく苦しみながら作業していました。 後から見返してみて、もうちょっと頑張ればよかったなと思ったのは、最後に主人公のギャビーさんが「皆さんが基本的人権を持つのであれば、私たちも人権を持てるべきではないのでしょうか?」というニュアンスでお話しされているカットがあるんですよ。英語では全く押しつけがましく聞こえない言い回しでしたし、字幕も「持てるべきではないのでしょうか?」にしたかったんですけれども、文字数との兼ね合いで「私たちも人権を持てるべきでは」で終わらせてしまった。それがやっぱり後から見返した時に、ニュアンスが違う気がして。もうちょっと工夫すれば良かったなと思った点ではありました。