トランスジェンダーの“吹き替え”どうする?…報道局員が考える「多様性」の伝え方
■「世の中に伝えること」と「当事者の想い」とのせめぎ合い
◯news every.プロデューサー・片田やよい: 私は放送日の朝に、前夜、国際部とこういうやり取りが展開されましたというのを共有してもらったんですが、前夜の番組側の考え方を代弁すると、国際部の皆さんが言っていることは良く分かるんだけれども、番組側としては「とは言え、伝わらなかったら意味がないでしょ」っていう…どうしても「伝えること」を大切にする立場だということなんですよね。 今回、非常に貴重なインタビューなので、VTRの中でも長く使われる構成になっていました。every.は通常、各国首脳らを除いて、企画の場合は原則、外国語を吹き替えにしています。それはなぜかと言うと、every.の視聴者の立場に立って考えると、夕方ってテレビの前に座って、ニュースをじっくり字幕を読みながら見られる環境にある人は、あまりいない時間帯なんですよ。大体なにかをしながら視聴している。 そうすると、せっかくのインタビューなのに、耳だけで聞いていて、英語だから分からないと思って見るのをやめてしまう。で、見て貰えないと、取材を受けてくださった当事者の方の思いとか、その企画をやる意味とかが伝わらない、いわばゼロになっちゃうじゃないですか。 だから、吹き替えは当事者の方の希望とややズレがあるのは承知の上なんだけれども、でも伝わることを優先するっていう考え方はないでしょうか?ということを、国際部に投げかけた、ということだと思います。
◯国際部デスク・近野宏明: その番組側の考えもよく分かるからこそ、難しかったよね。私は前夜のうちにすぐ返事をしたんだけれども、似ている声のナレーターを探したとしても、再現しようとすればするほど、どうしても作為とか色づけみたいなものが出てくる。吹き替えが不必要に女性っぽいとか、わざとらしく男性っぽさが残っていた時に、視聴者に「これは日テレが良いと思ってこういう吹き替えにしているんだな」と思われるのは避けるべきではないですかと。それと同時に、ゲイの当事者である白川さんと、トランスジェンダーであることを公表している日テレの谷生俊美さんにも意見を求めたんですよね。