美容医療の近未来。アンチエイジングを叶えられるのは富裕層だけになるのか?
美しさの沙汰も金次第
実際、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者によると、施術者の3分の2以上が美容医療における専門家ではない。そのため注入をはじめとする施術は、手に届きやすい価格帯も増えてきている。結果、異なる種類の美容医療の出来栄え、つまり“安かろう悪かろう”といった結果を、場合によっては長年にわたって生み出すことになる。私たちは顔の造形によって“どれだけお金を持っているか”を、目に見える形で半永久的に表すようになってきてしまっている。 何事にもいえることだが、治療がより手頃で一般的になるにつれて、私たちの好みも厳しくなり、“正しい方法”でエイジングケアに取り組むことがより難しくなってくる。 最初に不評を買ったのはフィラーで、2023年初頭には、“ふっくらしすぎた顔の終焉”といった記事のタイトルが散見された。若く見せようとして入れたフィラーは、入れすぎると、かえって老けて見えると今では言われている。実際、フィラーが時間とともに消えるという当初の予想とは異なり、他の部位に移動することがわかり始めているため、それを取り除く施術が急速に増えている。
広がりつづける美容格差
フィラーやボトックスなどの古い治療法が見向きもされなくなる一方で、それらと同じくらい高価な新しい治療法がその代わりを担うようになった。レーザー治療や注射、サプリメントなど、美容施術はすべて、永遠に若くいられる人と老いていく運命にある人との間の溝を広げている。 もちろん、これは今に始まった現象ではない。数年前、さまざまなセレブたちの“ビフォー&アフター”の写真に「あなたは醜いのではない。ただ貧乏なだけ」という言葉を添えたミームが流行した。 ジア・トレンティーノはインスタグラム上でありがちな顔、つまり若くて猫のような目とアニメのキャラクターのような長いまつ毛、小さくて端正な鼻、そしてふっくらとした唇を“サイボーグ顔”と呼んだ。「あなたは醜いのではない。ただ貧乏なだけ」という言葉は、当時の美容文化を風刺している。つまり、手術や治療、それにかかるメンテナンスを払うだけのお金さえあれば誰でも“SNS的な顔”は手に入るのだ。