「北欧型福祉国家」は崩壊に向かっているのか…フィンランドで起こっている、良質な医療・教育を脅かす驚きの政策
低所得者層が生きにくい社会となる懸念
昨年6月、1930年代以来、最右翼と言われる4党連立内閣がフィンランドで誕生した。この内閣を最右翼にしているのは、第2党のフィンランド人党である。前の連立内閣は、社民党のサンナ・マリンを首相とする中道左派だったので、大きな方向転換になる。 【写真】フィンランドで起こっている、良質な医療・教育を脅かす驚きの政策 1年経った現在、何が変わっただろうか。現在、進行していることの1つは緊縮財政政策である。政権発足当時は、60億ユーロ(1兆180億円)の歳出削減が目指されていたが、その後さらに30億ユーロ(5千90億円)が追加された。国の巨大な財政赤字を減らし均衡を得なければならない、という掛け声の下、社会保障や公的医療サービスの縮小、教育予算削減、消費税増税、政治ストライキ権制限などが起こりつつある。それは子ども、学生、働く人、子どもを持つ人、年金生活者など社会のほぼすべての人に影響を与えるものだ。 一方、その政策は高所得者層の優遇と低所得者層の締め付けを行うもので、これまでのように格差を減らし、誰でもが生きやすい社会を国が保証するのではなく、自己責任を強調する新自由主義的社会への転換が指し示されている。こうした政策が実現された場合、もはや「北欧型福祉国家」ではなくなってしまうと懸念する人は多い。 この政策を主導するのは、フィンランド人党の党首で財務大臣のリーッカ・プッラである。47歳の女性政治家だ。具体的にいくつかの例を見てみよう。 ・失業手当受給に必要な労働日数を6か月から12か月に延長。 ・失業手当開始までの5日間の自己負担期間を7日間に延長。 ・失業手当の金額を受給2か月後から20%、8か月後からは25%減少。 ・失業手当に追加される子ども手当の削除。これは、月額で150~285ユーロ(2万5千5百円~4万8千5百円)の減額になる。 ・高齢失業者への保証減額。 ・低所得者への収入補助手当減額。 ・2歳以下の子どもの育児休暇に対して「親手当」が320日間支払われるが、最初の16日間は払われない。 ・病気などの理由でフルタイムでは働けないが、週に1~3日程度の労働や、非正規労働で得る収入を補う手当がある。従来は、月額で300ユーロ(5万1千円)までの収入は手当に影響しなかったが、今後は少しでも収入があった場合、手当が減らされることになった。全く働かない方が良いと考えるケースも出てきそうだ。