「北欧型福祉国家」は崩壊に向かっているのか…フィンランドで起こっている、良質な医療・教育を脅かす驚きの政策
医療も教育も、北欧ならではのすばらしいシステムが崩れていく…
・学生への住居手当を減らす。学生は住居手当、貸与型奨学金、国が保証する学習ローンの3つを受けられるが、住居手当を減らし、国による学習ローンの保証額を上げる。住居手当が削減されると、借金の額が増える、アルバイトなどで働く時間が増え、卒業までの年数が長引くなどが予想されている。 ・18歳になった年の終わりに教材の無償提供が終わる。フィンランドでは、2021年に高校または職業学校までの中等教育が義務教育化された。小学校から大学まで教育費は無償、小学校から高校まで給食が無償だが、高校では教科書などの教材費は自費で購入する必要があった。高校の義務教育化に伴って、教材も無償になったが、今回は18歳なった年の終わりで教材の無償提供を止めるという。しかし、18歳で高校や職業学校を卒業するのが一般的なので、どれほどの節約になるのか疑問である。 ・職業教育予算から1億ユーロ(170億円)削減。 ・成人教育の予算の削減。フィンランドは生涯学習が盛んで、成人のための様々な教育機関があるが、削減によって成人学習手当がなくなり、提供される科目も減る。 ・養護施設で育った若者への支援を、現在の25歳までから23歳までに下げる。養護施設で育った子どもは、18歳頃になるとそこを出て自立するが、その後ソーシャルワーカーから精神的、その他の支援を受けることができる。2022年には1万365人の若者が、そうした支援を受けているが、年齢を23歳までに下げることによって2400万ユーロ(40億8千万円)を節減できるという。 ・公共放送Yleへの予算削減。最終的な金額の決定はされていないが、4年間で2億ユーロ(340億円)の削減がありそうだ。 増税に関わるものもある。 ・ 食品にかかる消費税は現在の14%に据え置きだが、キャンディーとチョコレートは、一気に25.5%に上がる。しかし、これによって高い国産品ではなく安い輸入菓子の消費が増える可能性があり、フィンランドの製菓会社には不安材料となっている。 ・一般消費税が、現在の24%から25.5%に増税される。消費税増税よって、来年は税収が4千万ユーロ(68億円)増えると試算されている。 ・年額2万3千~5万7千ユーロ(390万円~970万円)の年金について、税率を上げる。年額3万ユーロ(510万円)の場合、減るのは100ユーロ(1万7千円)程度だという。ただし、上記より少額、または高額の年金について増税はない。 労働者の権利を弱める政策も進んでいる。 その1つは、政治ストライキ権の制限である。政治ストライキは、雇用条件の悪化、社会保障削減などの政府の政策への抗議を目的とするものを指す。フィンランドの組合は業種別だが、この春フィンランド労働組合中央連合(SAK)が2ヶ月以上ストライキを続け、輸出が停止してしまった。それは、国の経済に重大な影響を与えるものであり、5月から政治ストライキは24時間以内と制限された。また、 ストライキが非合法と判断された場合、参加した人に200ユーロ(3万4千円)の罰金が課されることになった。